W杯で母国イランの歴史を変えるか。大会後は夢の舞台に?
そして今季、オランダリーグ3位、KNVBカップ準優勝と好成績を残したAZに対する、ジャハンバフシュの貢献度の高さは計り知れない。
ジャハンバフシュがプロとして初めてハットトリックを決めたのは今季のリーグ第31節のフィテッセ戦だった。嬉しさのあまり、試合後渡された記念の試合球に、ジャハンバフシュはチームメート全員のサインをねだった。
そして最終節にもジャハンバフシュはハットトリックを完成させた。シーズン終盤になって、ますます彼の調子は上向いているのだ。イラン代表として出場するワールドカップに、ジャハンバフシュは最高のコンディションで臨めそうだ。
同じグループにはスペイン、ポルトガル、モロッコがいる。
「このグループを突破できれば、イランは歴史を作ることになる。ワールドカップの目標はイラン国民に誇りを与えること。個人的には、キャリアの大きな役割を果たすことになると思う。そして、イランの若者の手本となりたい」
性格の良さでも知られるジャハンバフシュには「もっとピッチの中では優しくなくてもいい」(マックス・ハウバースAZテクニカルディレクター)という声があがるほど。テレビでもコメンテーターが「ジャハンバフシュは本当にポジティブな青年だ」と人となりを伝えていた。
「イラン人は人をもてなすことがカルチャーなんだ。チームメートをイラン料理店に誘っているよ」(ジャハンバフシュ)
今やAZで最も愛される選手となったジャハンバフシュだが、別れは近づいている。まだ具体的なチーム名は上がってないものの、来季に向けてビッグリーグへのステップアップが確実視されており、ジョン・ファン・デン・ブロム監督も「新シーズンは、アリ(ジャハンバフシュ)がいないことを念頭に置いて考えている」と発言したほどだ。
ジャハンバフシュの個人的な希望はブンデスリーガ移籍だ。バイエルン・ミュンヘンでプレーしたアリ・ダエイやヴァヒド・ハシェミアンが彼のアイドル。ブンデスリーガは彼にとって夢の舞台なのである。
(取材・文:中田徹【オランダ】)
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