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Jリーグ 4年前

ハイプレスを機能させるには? フロンターレ、マリノス、トリニータが採用するアプローチ【西部謙司のJリーグピンポイントクロス】

横浜F・マリノスや川崎フロンターレなど、GKも含めた後方からのビルドアップや、高い位置から奪いに行くハイプレスを行うチームはJリーグに多い。ただし、ハイプレスはかわされればピンチを招く危険性もあるだけに、運用するにあたっては注意が必要だ。今回はJリーグを実例に、ハイプレスを機能させるためのアプローチにフォーカスする。(文:西部謙司)

シリーズ:西部謙司のJリーグピンポイントクロス text by 西部謙司 photo by Getty Images

サイドを狙った大分

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【写真:Getty Images】

 延期になっていた第27節、柏レイソルと大分トリニータの対戦は1-1のドロー。互いに相手を分析しての対策合戦な流れだった。

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 大分は60%のボール保持率だったが、このチームの特徴として自陣でのポゼッションが高い。自陣でキープして相手を引きつけ、ロングパスで一気にひっくり返す攻撃を得意としていて「擬似カウンター」とも呼ばれている。

 この試合でも自陣でのキープからロングボールを使って攻め込んでいた。興味深かったのは、徹底してサイドへのロングボールを狙っていたことだ。柏のCBの横のスペースが空くと予想していたのだろうが、ロングボールから全体を押し上げていく戦い方は理にかなっている。

 敵陣深くにボールが入った後、相手のボールになったときの守備はそのまま高い位置から奪いに行くハイプレスが有効だ。後方からつないでいくチームが増えている傾向もあり、有効なハイプレスができるかどうかは今季のポイントだったといえる。

 ただ、やみくもにプレッシャーをかけていっても外されるだけで、かえってピンチを招いてしまう。ハイプレスを機能させる条件作りが必要だ。

ハイプレスを機能させるためには…

 優勝した川崎フロンターレはパスをつないで敵陣へ押し込み、サイドにトライアングルを作った。そこで失っても、すでに3人が近くにいるので速い切り替えができる。横浜F・マリノスもほぼ同じだが、パスの距離感が川崎より遠いときもありFWのプレスバックに少し時間がかかることもあったが、そのぶん後方から一気に距離を詰めていく迫力はあった。北海道コンサドーレ札幌は、マンツーマンで早めにつかまえることでプレスの強度を上げる大胆なハイプレスを行っていた。

 ショートパスで押し込んでからのハイプレスとは別に、ロングパスからハイプレスへ移行する方法もある。

 オルンガのいる柏レイソル、長沢駿のベガルタ仙台はトップにロングパスを蹴って、セカンドボールを拾ってカウンターへ持っていく形がある。セカンドを相手に拾われたときはそのままプレスして全体を押し返していく。湘南ベルマーレもロングパスからハイプレスへの移行を狙っていた。

 ただ、中央へのロングパスは強力なターゲットマンがいないと機能しにくい。相手がボールを拾ったときには、全方位的にパスができるのでプレスしても逃げ場が多いのだ。

攻守の連結と循環

 リバプールはロングボールとハイプレスの組み合わせの代表的なチームだが、ロングパスはサイドを狙っている。3トップでは最も長身のCFロベルト・フィルミーノではなく、小柄なモハメド・サラーやサディオ・マネがターゲットになのだ。バイエルン・ミュンヘンもロベルト・レヴァンドフスキがいるのにサイド狙い。

 理由は前記のとおりで、サイドのほうがその後のハイプレスで封じ込みやすいからだ。サイドの封じ込みから逃げられても、苦し紛れのパスを中央でカットすれば大きなチャンスになる。

 つまり、ショートパスでもロングパスでも、サイドから攻め込むことでハイプレスが効きやすく、攻守の循環を作りやすい。大分がサイドを狙っていたのは柏対策もあったろうが、ロングボールとハイプレスの組み合わせ方として合理的なのだ。

 JリーグはGKも含めた後方からのビルドアップに取り組むチームが増え、全体的にビルドアップ能力が上がっている。必然的にそのビルドアップを阻止すべくハイプレスを狙うチームも増えてきた。今季は川崎Fがハイレベルの攻守の循環を示して優勝した。ボールをつなぐこと、それを阻止すること。カギになるのは、チームに合った方法で攻守を連結して循環を作ることだと思う。

(文:西部謙司)

【了】

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