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Jリーグ 3年前

清水エスパルス、鹿島戦大逆転勝利の裏で何が? 「今までとは違う」権田修一が変えたい既成概念とは【コラム】

明治安田生命J1リーグ開幕節、鹿島アントラーズ対清水エスパルスが27日に行われ、清水が1-3で勝利を収めた。3年ぶりにJリーグ復帰を果たした権田修一はビッグセーブを見せて開幕戦勝利に貢献。ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が今季から指揮を執る清水は、「強くて勝てるチーム」に変わろうとしている。(取材・文:元川悦子)

text by 元川悦子 photo by Getty Images

6年ぶりの鹿島アントラーズ撃破

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【写真:Getty Images】

「鹿島は伝統という言葉が一番似合うクラブ。今年30周年ということで、ただ30年あるわけじゃなくて、『勝つ』という文化の中で30年間、あり続けているクラブ。エスパルスも見習わなければいけない。簡単に勝てる相手ではないと思いますけど、僕らが目指すところに行くためには超えなければいけない壁の1つ。しっかり戦いたいと思います」

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 3年ぶりにJリーグに復帰した清水エスパルスの守護神・権田修一が野心をむき出しにしたように、27日の2021年J1開幕戦で対峙した常勝軍団は、絶対に倒さなければいけない宿敵だった。

 鹿島に勝ったのは2015年の開幕戦以来。3-1で勝利した試合から実に6年も経っていた。移籍組の原輝綺が「うまくいってるなと試合中に感じていてもフタを開けたら負けてることが多いのが鹿島。まさに試合巧者」と厳しい表情を浮かべた通り、その勝負強さを出させないことが最重要テーマだったのだ。

ロティーナ監督が絶賛した権田修一のプレー

 今季から指揮を執るミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が採った策は、4-4-2と4-3-3の併用だった。

 開始時はディサロ・燦シルヴァーノが最前線のチアゴ・サンタナの背後に位置していたが、鹿島のボランチをマークするため徐々にインサイドハーフに下がり、中盤で守備に回ることが多くなった。ディサロと中村慶太が永木亮太と三竿健斗をマークして中盤からのパス出しを防ぎ、守備陣全体を高い位置で保つことが狙いだったのだろう。前半の清水は確実にその仕事を遂行した。

 前半最大のピンチは29分。右サイドのファン・アラーノのクロスがゴール前のエヴェラウドに通った場面だ。昨季18得点のブラジル人FWの打点の高いヘッドは枠に飛んだが、そこに立ちはだかったのが37番の守護神・権田。鋭く反応し、右手1本でシュートを防ぐと、こぼれ球を拾った土居聖真にもプレッシャーをかけた。結局、シュートはポストを叩き、失点は免れた。ロティーナ監督も「権田のスーパーセーブが大きかった」と絶賛した。

 スコアレスで迎えた後半も鹿島が主導権を握る時間帯が長く続いた。前半は高い位置からプレスに行けていた清水も、この時間帯は低い位置でブロックを作らざるを得なくなる。それでも権田が凄まじい形相でコーチングを継続し、守備陣に集中力を保つように促す。後半30分にリスタートから荒木遼太郎の一撃を食らった時も「まだ行ける」と仲間を力強く鼓舞し、しっかりと前を向かせた。

清水エスパルスは「今までとは違う」

 権田が最後尾からチーム全体を勇気づけたことで、清水は諦めることなく反撃ののろしを上げる。失点から3分後には交代出場したばかりの河井陽介の左クロスに中山克広が飛び込みシュート。このボールがチアゴ・サンタナの足元に収まり、DF町田浩樹の股を抜く技ありゴールをお見舞いする。

「鹿島にとってはこの同点弾のショックが大きかった」と指揮官も振り返ったが、ここが勝負の分かれ目になったのは間違いない。

 さらに畳みかける清水は、後半38分に2点目をゲット。カルリーニョス・ジュニオの左クロスに、スーパーサブの後藤優介がファーから飛び込んで、ドンピシャのヘッドで決めている。さらに残り2分というところで河井の左CKからオウンゴールをもぎ取った。交代選手が次々と活躍するというロティーナ采配が見事なまでに的中し、彼らは開幕戦で苦手な相手から3-1の勝利をつかんだのだ。

 タイムアップの瞬間、権田は派手なガッツポーズで喜びを爆発させた。「エスパルスがこの位置(昨季16位)にいるのはおかしい。今までとは違うんだというのを見せたい」と開幕直前に語気を強めていたように、上々のスタートを切ることができた。

生まれ変わりつつある清水の精神的支柱に

「僕はエスパルスが『うまいだけのチーム』じゃなくて、『強くて勝てるチーム』『勝ち続けられるチーム』になっていけばいいと思っています。それと同時に『日本代表はどうせ海外組が入るんでしょ』っていうのを変えたい。エスパルスの選手みんなに言えることですけど、若くていい選手が沢山いるので、『Jリーグにもこんなにいい選手がいるんだよ』って気持ちを持つことが大事。僕自身も日本に帰ってきて呼ばれなくなったら、それは素直に自分の力不足。Jにいても呼ばれ続ける状況を作り上げていかなきゃいけない」

 今回の清水復帰に当たり、こう強調していた権田。実際に「今年の清水は一味違う」という印象を残せたのは、大きな収穫だろう。とはいえ、戦いはまだ始まったばかり。これからさらにチーム完成度を高め、勝利を重ねていく必要がある。

「ロティーナ監督は守備的だと言われがちですけど、僕は攻撃が好きだと思ってるし、ボールを持てば守備をしなくていい時間帯が増える。それを繰り返していることで『攻撃重視』のイメージがついてくるのかな」と殊勲の後藤優介も前向きにコメントしていた。見る者を魅了するスタイルを突き詰めていくことで、名門復活が叶うはずだ。

 生まれ変わりつつあるチームの精神的支柱、かつけん引役となるのが、31歳の権田だ。それを果たし、日本代表GKとしても君臨し続けること。それが今季の彼に課されたノルマと言っていい。

(取材・文:元川悦子)

【了】

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