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Jリーグ 1年前

盟友の死、最悪のミス…。それでもなぜサンフレッチェ広島は立ち直ったのか?【コラム】

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「このまま試合が終わったら…」「僕のせいで…」


【写真:Getty Images】



失点を献上するまでの流れを見つめるだけだった佐々木は、その場にひざから崩れ落ちてしまった。試合後に「不運な形でしたが」と問われた佐々木は、おもむろに首を横に振った。

「全然不運ではないですよ。僕の実力不足です。実際、加藤選手は見えていなかったし、正直、バックパスをつけた後に気がついたので。相手がツートップの場合、ああなってしまう危険性があるというのを自分のなかでしっかり認識しながらプレーする必要があったのに」

先発メンバーのなかでは最年長の1人となる33歳の佐々木は、失点直後から何度も自分を責めた。まだ時間は残されていると言い聞かせて、必死に奮い立たせようとした。それでも気がついたときには、ネガティブな感情が脳裏をかけめぐる。負のスパイラルに陥りかけていた。

「時間が進んでいくなかで、いろいろと考えました。このまま試合が終わったら、記者さんたちの前で僕の力のなさを話さなきゃいけないのかと、試合中に思ってしまうほどのミスでした。僕のせいで広島に4つ目の星をつけられないんじゃないかと。本当に難しい感情になりました」

ユニフォームにつける4つ目の星とは、いま現在は日本代表を率いる森保一監督のもとで勝ち取った、2012、13、15シーズンのJ1リーグ制覇に次ぐタイトルの獲得を意味していた。

対照的にカップ戦では、これまでに合計8度も決勝に臨むもすべて敗退。6日前の16日にはJ2のヴァンフォーレ甲府と天皇杯決勝を争うも、1-1のまま突入した延長戦でも決着をつけられず、もつれ込んだPK戦の末に敗退。史上最大の下克上の引き立て役を演じていた。

11月20日にカタールワールドカップが開幕する関係で、変則日程となっている今シーズン。10月にカップ戦のファイナルが2週連続で続き、両方で広島がタイトルをかけて戦う。しかも最初の一戦で屈辱を味わわされた。今回もミスで負けたら。負の連鎖が止まらなくなった。

「こんな日程はこれから先、もうないんじゃないかと思えるほどですし、これで今日も失ってしまったら、みんなのメンタル的にこんな過酷なこともないんじゃないかって」

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