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Jリーグ 1年前

盟友の死、最悪のミス…。それでもなぜサンフレッチェ広島は立ち直ったのか?【コラム】

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失点直後のサンフレッチェ広島



それでも、若い選手たちは下を向かなかった。大迫は失点直後から大声と大きなゼスチャーとで周囲を何度も鼓舞し、天皇杯で準優勝に終わった直後は人目をはばからずに号泣した大卒ルーキー、MF満田誠も気合いのこもったプレーでチームをけん引した。

ベンチからは青山の、35歳のMF柏好文の、38歳のMF柴崎晃誠の声が響いてくる。いつまでもミスを引きずり、落ち込んでいる時間なんてないと佐々木は自らに喝を入れた。

「チーム全体が『何しているんだよ』と、ダメージを受けるぐらいのミスだったんですけど。それなのに若い選手たちやベテランの選手たちが『やることは変わらないよ』とか、あるいは『別にこの1失点ぐらいじゃ崩れないよ』という姿勢を見せてくれたし、声がけもしてくれたので」

例えば大迫は58分に、縦パスに抜け出したMF毎熊晟矢がそのまま放った決定的なシュートをセーブしている。決められていれば、セレッソの勝利がほぼ決まっていた大ピンチ。1点差を死守した広島が息を吹き返してきた79分に、ターニングポイントが訪れた。

FWナッシム・ベン・カリファと小競り合いを起こしたセレッソの守備の要、DFマティ・ヨニッチにイエローカードが提示された直後だった。ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が介入し、さらに山本雄太主審が選択したオン・フィールド・レビュー(OFR)をへて、拳をベン・カリファの顔面に当てる乱暴な行為を演じたヨニッチへのカードがレッドに変わった。

9分が表示されたアディショナルタイムの6分。満田が放った右コーナーキックからベン・カリファがヘディング弾を放ったシーンでも、VARの介入からOFRをへて、ペナルティーエリア内でセレッソのDF鳥海晃司のハンドが認定されてPKを獲得した。

これを途中出場していたキプロス代表のFWピエロス・ソティリウが、ゴール右隅へ確実に決めて追いついた瞬間に、佐々木の脳裏にはひらめくものがあった。

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