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Jリーグ 1年前

盟友の死、最悪のミス…。それでもなぜサンフレッチェ広島は立ち直ったのか?【コラム】

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「タイトル獲得が、このクラブの新たな未来を切り開く」


【写真:Getty Images】



「どのぐらいの時間に同点になったのかはちょっと把握していないんですけど、PKが決まったところで、僕たちにも運があったのかな、と」

延長戦突入の気配も漂い始めた死闘は、同点から5分後のアディショナルタイム11分に劇的な形でスコアが動く。再び獲得した右コーナーキック。満田が放ったボールを、走り込んできたソティリウが右足でヒット。セレッソの守護神キム・ジンヒョンが一歩も動けない逆転弾が生まれた。

この場面ではニアに飛び込んだ佐々木が潰れ役となり、ストーン役だったセレッソのMF清武弘嗣に仕事をさせなかった。さらに佐々木の後方に荒木も飛び込み、結果としてソティリウへのマークが甘くなった。総力戦でもぎ取った逆転ゴールに数分後に、優勝を告げる笛が鳴り響いた。

ピッチの上で佐々木は再び涙腺を決壊させた。今度の涙にはタイトルをもぎ取った喜びと、自らのミスを帳消しにしてくれたチームメイトたちへの感謝の思いが込められていた。

「本当に仲間に助けられました。厳しい試合でしたけど、もう最高に嬉しいです」

人目をはばからずに声を震わせた佐々木は試合後の取材エリアで、決勝前日に「タイトル獲得が、このクラブの新たな未来を切り開く」と語った意味をあらためて紐解いている。

「ウチには若い選手が多いですし、みんな非常に素晴らしいプレーをしている。それでもタイトルを獲ったという成功体験が生きてくる瞬間がこの先、間違いなく訪れる。そのためにも年を取っている僕たちが、彼らにそういう思いをさせてあげたくてそういった言葉が出たと思うんですけど、実際は若い選手たちに助けられながら、彼らからパワーをもらいながら本当にいい試合ができました」

甲府でプロとしての第一歩を踏み出した佐々木は、甲府で20シーズン目を迎えている42歳のレジェンド、DF山本英臣の胸中にちょっとだけ思いをシンクロさせている。

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