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サッカー日本代表、堂安律の4年間。久保建英という刺激。遠回りこそが成長の近道【分析コラム】

ドイツ移籍で感じたスタイルの違い



「PSVでは自分の周りにスーパーな選手がいる分、自分が1対1で仕掛けるのをやめて、味方へのパスを選択する場面が多くなっていった。本当に少しずつですけど、プレースタイルが自分らしくないというか、ネガティブなものになっていったと感じていました」

 ブンデスリーガ1部で初めてプレーした2020/21シーズンの結果を振り返れば、堂安はリーグ戦で全34試合に出場。そのうち先発は33回を、プレー時間は全体の94.1%にあたる2879分をそれぞれ数えた。ブンデスリーガ1部でプレーした日本人選手では、リーグ戦全試合出場は1982/83シーズンの奥寺康彦(ブレーメン)以来、38年ぶり2人目の快挙だった。

 冒頭で記した急がば回れには、危険な近道より遠くても安全で確実な方法、という意味も込められている。PSVで右肩下がり状態だった数字を、昇格組のビーレフェルトならば好転させられると考えたのか。堂安は「試合に出られるかどうかで、選んだわけではありません」と首を横に振った。

「大きな成長曲線を描きながら、さらに化けていくためには環境を、つまりプレーする国を変える、というのが選択肢のひとつになっていました。実際、国によるスタイルの違いはこんなにも大きいのかと、シーズンを通して新鮮な気持ちでプレーすることができました。オランダは3点取られても4点取ればいいという攻撃的なスタイルでしたが、ドイツは例えば1-0で勝つとか、堅い展開になる試合が多いなかで守備の仕方もまったく違うと感じていたので」

 しかし、ビーレフェルトで送った、心身ともに充実した日々はわずか1年で終わりを告げた。ビーレフェルト側は買い取りオプションの行使を目指したが、コロナ禍で減収を余儀なくされた状況下で500万ユーロ、当時のレートで約6億6000万円に達した違約金はあまりにも高額だった。

 コロナ禍で延期されていた東京五輪を間近に控えた昨年6月。U-24日本代表に招集されていた堂安の退団を発表したビーレフェルトは、別れを惜しむように公式サイト上にこんな言葉を掲載した。

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