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堂安律が目指す本田圭佑超え。サッカー日本代表、必然だった逆境大好き人間の活躍【カタールW杯】

シリーズ:コラム text by 元川悦子

「どん底」から這い上がりW杯でインパクト


【写真:Getty Images】



 同点弾の3分後、GK権田修一のロングフィードから伊東、田中碧とつながったボールを受けた背番号8は、ペナルティエリア内を強引に侵入。角度のないところから右足シュートを放った。次の瞬間、逆サイドの三笘薫がギリギリのところで折り返し、ゴール前に詰めていた田中がヘッド。電光石火の逆転弾を決めたのである。

 長い長いVARチェックの末にゴールは認定。ルイス・エンリケ監督が「パニックの5分間」と嘆いた怒涛の攻めで、日本代表は一気に形勢逆転に成功したのだ。

 堂安が思い切って仕掛けていなければ、三笘の折り返しも、田中碧のヘッドもなかった。「ボールを持ったら前へ」という背番号8の強気のマインドが2つの得点をもたらしたと言っても過言ではない。グイグイと押し切れる堂安の存在は、今の日本代表にとって非常に重要なポイントになっているのだ。

「強気のマインド? 初めてのW杯なので(要因は)よく分からないですね。ただ、間違いなく言えるのは、この大会に賭ける思いが人一倍あったということ。悔しい思いをしてきた分、俺からしたら『必然』かなって。こんなに悔しい思いをしていた分、少しくらい返ってこないと人生不平等だと思う。ここまで長く感じましたけど、諦めずにやることが大事ですね」と彼はしみじみとこう語っていた。

 2018年9月の森保ジャパン発足から4年3カ月。当時20歳だった堂安は新世代のエース候補筆頭だった。2019年アジアカップまでは森保監督から大きな期待を寄せられたが、その後は所属のPSVで出番を失い、ヘンクで目覚ましい活躍を見せた伊東に日本代表でもポジションを奪われる格好になった。

 2021年夏の東京五輪では久保建英と並んでエース級と位置づけられたが、W杯最終予選が始まるとベンチに縛られ続ける。最重要局面だった今年3月のオーストラリア代表戦ではまさかの代表落選。「逆境大好き人間」を自称するレフティはかつてない屈辱を噛みしめつつ、どん底から這い上がろうと決意。この7カ月間、ゴールという結果だけを追い求めてここまで来た。

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