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Jリーグ 7か月前

「ヴィッセル神戸」を取り戻した180分。“らしさ”を思い出させた2つの宝刀とは【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

2試合連続の“抜擢”に見える狙い



 昨夏にサガン鳥栖から加入した飯野は、プレー機会に飢えていた。神戸に馴染んだ矢先の同年9月に右腓腹筋肉離れで戦線離脱。そのままシーズンを終え、復帰を果たした今シーズンも開幕直後に今度は左足を負傷。コンディションが上がらず、自分のプレーに納得できない日々が続いた。

 ただ、試合は待ってくれない。マリノス戦を翌日に控え、必死に気持ちを高めていたなかで、神戸のクラブハウスを齊藤未月が訪ねてきた。8月19日の柏レイソル戦で左膝に全治1年の大怪我を負い、長期の戦線離脱を余儀なくされた齊藤は退院から一夜明けて、さっそくリハビリを開始していた。

 左膝に装具を装着しながら務めて明るく、前向きにメニューを消化している齊藤の姿に、入院中に見舞いに足を運んでいろいろと語り合っていた飯野は、あらためて胸を打たれた。

「パワーをもらえますよね。怪我をしたあいつが誰よりもつらいはずなのに、それでも明るく過ごしている姿を見て、悩んでいる場合じゃないと思いました。結局のところは自分がやるしかないし、自分自身でチャンスをものにしていくしかない。前向きに、前向きにという姿勢になれました」

 神戸はホームのノエビアスタジアム神戸で行われた、9月23日の明治安田生命J1リーグ第28節で、上位浮上をうかがって乗り込んできたセレッソ大阪を1-0で返り討ちにしている。ライバルのひとつを蹴落とした関西ダービーでも、吉田監督はそれまでと異なる選手起用で流れを引き寄せている。

 右ウイングやインサイドハーフでの起用がメインだった佐々木大樹を、ほとんど経験のない左ウイングで先発させた。狙いはただひとつ。対面に来る右サイドバックで、直前にデビューを果たした日本代表で、及第点以上のプレーを見せていた毎熊晟矢の存在を消すタスクが佐々木に託された。

 V・ファーレン長崎のコーチ時代に、フォワードだった毎熊を右サイドバック転向に導いている吉田監督は「彼の怖さは、自分が一番わかっている」と断りを入れた上で佐々木の抜擢を説明している。

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