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Jリーグ 7か月前

「賭けに勝った」町田ゼルビアが乗り越えた3つの節目。「出過ぎた杭」が貫いた姿勢とは【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

賭けと批判

FC町田ゼルビア
【写真:Getty Images】



「1年目から勝負をかけて昇格させよう、と。それにふさわしい予算をかけるし、それにふさわしい選手を獲得しようと。そうした賭けに勝った感覚ですね。この景色を夢見て頑張ってきたので、過去一番くらい興奮しました。大人になってから、こんなにわかりやすく喜べるのはなかなかないですね」

 黒田監督の要望もあって獲得した、高さと強さを兼ね備えたセンターバック、圧倒的な個の強さを持ったフォワード、アップダウンを泥臭く繰り返すサイドアタッカー、そして相手のボールホルダーを泥臭く潰す中盤の選手。新戦力がかみ合った町田は2月の開幕直後からJ2戦線を席巻し続けた。

 快進撃を続けるなかで、決して好ましくない外野の声が藤田社長の耳に何度も入ってきた。

「J2は特に魔境と言われるくらいに実力が拮抗しているので、いろいろと言われやすいし、言われるのは仕方がないとも思っています。そのなかで僕自身、頭ひとつというよりも体ひとつくらい抜け出さないとそういった声は止まない、というのを自分の経験に照らし合わせてもわかっていたので」

 出る杭は打たれる。大型補強に対する怨嗟の声だけでなく、堅守速攻をベースにインテンシティーが常に高く、泥臭い肉弾戦も厭わない町田の戦い方にも懐疑的な視線を向けられた。黒田監督が率いた青森山田の十八番だったロングスローを多投すれば、投げる前にタオルでボールの表面を拭く行為を含めて、アクチュアルプレーイングタイムを無駄に消費していると批判の対象にもなった。

 バッシングに近い外野声がマックスに達した時期を、藤田社長は苦笑しながら振り返る。

「熊本戦の前くらいじゃないですか。甲府戦のときも。プレースタイルも含めてですね」

 熊本戦とはホームの町田GIONスタジアムで対峙した4月29日の第12節を指す。その前節で甲府に敗れ、2敗目を喫していた状況も、もっと負けろという外野の声を増幅させていたのだろう。いわば藤田社長が感じたターニングポイント、もっと言えば正念場と位置づけられる一戦だった。

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