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Jリーグ 7か月前

「賭けに勝った」町田ゼルビアが乗り越えた3つの節目。「出過ぎた杭」が貫いた姿勢とは【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「勝利至上主義とは全然違う」



しかし、町田は選手間投票で黒田体制下のキャプテンに選出されたDF奥山政幸、そしてエリキのゴールで試合を優位に進め、熊本の反撃を試合終了間際の1点に封じる“らしい”展開の末に勝利。その後も引き分けをはさんで白星を4つ並べる戦いぶりで、首位の座を安泰なものにしている。

 勝利のなかには昇格を争うライバルと目された清水を、試合終了間際にDFチャン・ミンギュが決めた劇的なゴールで下した一戦も含まれていた。チームのぶれない戦いぶりが藤田社長に「体ひとつ抜け出す」を強く意識させ、夏の移籍期間におけるさらなる補強につながったのだろう。確かに出る杭は打たれるかもしれない。しかし、出過ぎた杭はもはや打たれる対象にすらならない。

 雑音にも近い外野の声の存在を黒田監督も把握していた。特にロングスロー批判には「ルール上でダメというわけでもない以上は、われわれの武器として使っていく」と意に介さないと公言していた。

「相手にクレームをつけられる理由もないので、そこはぶれずにやっていく。よく勝利至上主義と言われていますけど、勝利至上主義と勝利にこだわる姿勢、細部にこだわる姿勢は全然違うので」

 フロントを含めたチーム全体で、今シーズンの開幕前から描かれてきたベクトルは一度もぶれなかった。それどころか戦いを重ねながら、さらに先鋭化させてきた末に、夢にまで見たJ1への切符を手にした。現場とフロントのトップが位置づけるターニングポイントの戦いは異なるものの、連敗だけは絶対に喫しないという、長丁場の戦いを勝ち抜く上での鉄則のもとではくしくも一致している。

 そのなかで黒田監督は「J2とは違った戦いが待っている」と、早くも来シーズンを見すえる。

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