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Jリーグ 6か月前

ヴィッセル神戸は「山口蛍不在」をどう乗り越えたのか。酒井高徳が感じた変化とは【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

代役ボランチのクオリティ



 浦和が右サイドバック(SB)にアレクサンダー・ショルツを置き、守備を強化してきたこともあり、前半の神戸はボール支配率では上回ったものの、決定機をなかなか作れなかった。酒井が加わった神戸の中盤はしっかりバランスを取っていたが、ゴールの匂いを感じさせたのは20分の佐々木大樹の右からのシュート、佐々木がマリウス・ホイブラーテンからボールを奪って大迫勇也に出してフィニッシュまで至った37分の得点機くらい。浦和も過密日程の中、いい守備の立て直しを見せており、0-0というのは妥当な展開だったと言っていい。

 後半突入後も拮抗した展開は続いたが、開始早々の53分には浦和の伊藤敦樹が酒井高徳の激しいチャージで負傷。そのまま担架に運ばれて退場してしまう。自身も元代表だった酒井高徳は「代表選考されているのに申し訳ないと言いました。伊藤選手のケガが大事に至らないことを願っています」とのちにSNSで発信したが、それだけ1プレー1プレーに真剣かつフェアに向き合っているということに違いはない。真摯な姿勢は神戸のチーム全体に響いたことだろう。

 酒井高徳は70分にも右サイドで激しいデュエルで小泉佳穂からボールを奪い取り、佐々木にチャンスボールを供給するプレーを見せたが、その闘争心や勝利への飽くなきメンタリティは山口以上だったかもしれない。

「蛍の穴を埋めた? いや、埋められてないっすよ。しんどいですよ、マジで(苦笑)。この試合の前日、前々日に鹿島戦の蛍のポジショニングを映像で見て『蛍だったらここにいるだろうな』と考えながらやりましたけど、彼のありがたみを改めて感じた。守備のところは最低限やったし、前線に絡んでいく動きも意識したけど、中盤の落ち着きは自分には与えられなかった」と本人は反省しきりだったが、コンビを組んだ扇原貴宏は「高徳はどこのポジションをやっても周りを動かしたりできるので、ボランチでホントにハードワークしてくれましたし、最後の最後まで球際の部分で戦ってくれる選手なので、ホントに横にいて頼もしかった」と絶賛していた。

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