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Jリーグ 6か月前

ヴィッセル神戸は「山口蛍不在」をどう乗り越えたのか。酒井高徳が感じた変化とは【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

「大丈夫、まだ行ける」ヴィッセル神戸は諦めなかった

先制ゴールを決めたヴィッセル神戸DFマテウス・トゥーレル
【写真:Getty Images】



 実際、酒井高徳は年代別代表時代から左右のSBだけでなく、ボランチ、サイドハーフと多彩な仕事をこなしてきた選手。FIFAワールドカップ(W杯)唯一の出場となった2018年ロシア大会・ポーランド戦でも右MFに抜擢されている。「究極のマルチタスク」とも言うべき男がいたことで、吉田監督も神戸も救われたのは間違いない。中盤で獅子奮迅の働きを見せた酒井高徳がいたからこそ、後半27分のマテウス・トゥーレルのしぶとい先制弾、後半ロスタイムの大迫勇也の決勝弾、劇的な2-1での勝利につながったといっても過言ではないだろう。

 酒井高徳らベテラン選手の存在価値が特に大きかったのは、後半アディショナルタイムにホセ・カンテの個人技で1-1に追いつかれた時間帯だった。カンテのゴールシーンで彼自身も最後に足を伸ばしたが届かず、失点してしまったが、大迫とともに「大丈夫、まだ行ける」と身振り手振りでチームを鼓舞。士気を高め続けたのだ。

 今季の神戸は酒井高徳や大迫、山口といったW杯経験者たちが力強くリードする形が長く続いていたが、勝利を重ね、終盤まで優勝争いを繰り広げることで、他の若い選手たちも自信をつけ、彼らと同等の高い闘争心や勝利への執着心を持てるようになった。それがラストプレーでの前川のロングキック、大迫の無人のゴールという形で表れたと酒井高徳は考えている。

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