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日本代表 7年前

ハリルJ、“ぶっつけ本番”が裏目に。2列目のテコ入れは逆効果。プランの整合性への疑問符【識者の眼】

text by 河治良幸

インサイドに選手が密集。幅を取った攻撃はできず

イラク戦に臨んだ日本代表のスターティングイレブン
イラク戦に臨んだ日本代表のスターティングイレブン【写真:Getty Images】

 1つの問題点は久保がつなぎの段階から中寄りにポジションを取りすぎていたこと。ウィングの選手がポジションに幅を取るのは現代サッカーの定石だが、久保は右サイドの時よりも常に中に入り込み、相手のディフェンスを中に集めてしまった。

 そこから一度起点になり、大外に長友を走らせるプレーなどを絡めれば違った揺さぶりになったが、そういうシーンもほとんど無かった。長友が相手の最も危険なアタッカーであるヤシーンと対峙していたこともあるが、なかなか攻め上がるタイミングを取れなかったのは従来の“トリガー”になる選手が同サイドにいなかったことが大きい。

 もちろん中盤がボランチも含め、いつもの構成と違っていた影響もある。遠藤航と井手口陽介の若いコンビはボールを追い、そこから積極的に高い位置を取るプレーに強みを出していた。

 自陣に引いた状況ではDFラインの手前でロングボールを跳ね返すプレーも目立ったが、中盤にためを作る役割はほとんど果たせず、攻撃の起点が前線の大迫と右の本田のところに偏ってしまった。

 左利きの本田が右から中央に流れっぱなしになったのも、そうした状況を良くしようというイメージからだろうが、ポゼッションをベースに両SBが高い位置を取り続けられる状況ではない中で、左の久保も右の本田も中央に寄ってしまう現象は完全に攻撃の幅を狭めてしまった。

 もともと中盤で細かくボールを回すタイプのチームではないが、縦志向の強い攻撃の中にも左右のサイドで幅を取りながら、攻撃に厚みをかける基本イメージは共有されていた。

 しかし、このイラク戦はカウンター志向が強まる中でも幅が狭すぎ、そこにSBの攻撃参加を有効に使うことができなかった。

 後半途中に右に生じていたスペースを生かして酒井宏が攻め上がるシーンは何度か見られたが、それも攻撃が中央に寄っていた副産物であり、そこで得たチャンスもものにすることができなかった。

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