フットボールチャンネル

アジア 7年前

浦和、怒涛の4連続ゴールで奇跡の逆転準決勝進出。ぶれなかった「ACL制覇」の目標

text by 藤江直人 photo by Getty Images

絶望的な雰囲気漂うも…泰然自若としていた背番号5

 退場のシーンは左タッチライン際で競り合ったFW興梠慎三の額を、振り向きざまに左足を高く上げた車屋のスパイクの裏がかすめた前半38分の行為が、サウジアラビアのファハド・アルミルダシ主審に危険なプレーと見なされた。

「ポイントが少しだけおでこに当たったけど、あれはかわいそう。普通はイエローだけ。でも、ACLで中東の人が笛を吹くと、ああいうのにすぐレッドカードを出しちゃう。何度かそういう中東のレフェリーを経験しているから。感覚がちょっと違うので。特に中東の人が吹くときは、気をつけてやっている」

 鹿島アントラーズ時代を含めて、ACLで50試合近くを戦ってきた濃厚な経験が生きた。退場劇のわずか3分前にはMF矢島慎也のスルーパスに抜け出し、同点弾を決めている31歳のベテランはこう続けた。

「ひと言でいうと、退場がものすごく大きかった。それ(同点ゴール)も大きかったけど、何よりもあの退場でいけると思った」

 等々力陸上競技場で8月23日に行われた第1戦を、1‐3の完敗で落としていた。もっとも、アウェイゴールが希望を紡いだ。ホームで2‐0で勝てば、逆転で9年ぶりに準決勝へ駒を進められる。

 描いていた青写真は、前半19分に崩れかけた。DFエウシーニョに最終ラインの裏に抜け出され、与えてはいけないはずのアウェイゴールを喫した。絶妙のスルーパスを出したのは中村だった。

「いままでサッカーをやってきたなかで、どうしたらいいかちょっとわからないくらいの……何から始めていいのかわからない状況でした」

 23歳の矢島が漏らした偽らざる本音が、チーム内に漂いはじめた絶望感に近い雰囲気を物語る。もっとも自身の背後をエウシーニョに突かれた30歳の槙野は、泰然自若とした姿勢を取り続けた。

「ただでさえ自分たちはマイナスからスタートしていますし、1点を取られないように試合には入りましたけど、1点取られた後のメンタリティーというのも少しは準備していた部分はあったので。1点取られれば3点取ればいいじゃん、という構えでしたし、その意味では落ち着いてゲームを運べていたのかなと」

1 2 3 4 5

KANZENからのお知らせ

scroll top