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人体の弱点をつく。風間理論による解決策。身体能力に左右されずゴールを奪う方法

text by 西部謙司 photo by Getty Images

得点率の高いエリアでシュートを打つ。そこからの逆算

「ポゼッションはそれだけでは何の意味もない」と指摘したヴァイッド・ハリルホジッチ日本代表監督
「ポゼッションはそれだけでは何の意味もない」と指摘したヴァイッド・ハリルホジッチ日本代表監督【写真:Getty Images】

「川崎でも名古屋でも『外す』から始めました」(風間監督)

 風間監督の言う「外す」は、ゴール近くでマークを外してパスを受けるプレーを指す。つまりシュートへ直結するプレーだ。最後の仕上げのところからトレーニングを始めていて、そこまで持っていくポゼッションより優先していたわけだ。

「最後の答えを持たないまま、ポゼッションなんて怖くてできないですよね」(風間監督)

 答えの出ない式を作り続けても袋小路に迷い込むだけ。しかし、ゴールを奪うための答えを持っていれば、ポゼッションは強力な意味を持つ。より多くのチャンスメークにつながるからだ。ポゼッションには相手のチャンスを減らす効果もあるが、それに意味を持たせるのは主にゴールするための答えがあるかどうかにかかってくる。

「外す」から始めたという風間監督のサッカーは、いわば逆算方式になっている。

 シュートが決まるエリアは実は決まっていて、そのエリアでシュートを打つことが得点力を上げる決め手になる。ペナルティーエリアの中、そしてゴールラインの幅。このエリアはゴールデンエリアとも呼ばれていて、他の場所からのシュートに比べて格段に得点率が高いことは各種の統計でもはっきりしている。このエリアでシュートを打つためのアプローチを確立するのが得点への近道といえる。

 ゴールデンエリアへの進入路は3つ。両サイドと中央だ。急がば回れではないが、サイド攻撃は有効な攻め手として知られている。クロスボールはDFにとって“ボールウォッチャー”になりやすく、つまりゴールデンエリアでフリーな選手を作りやすい。そしてシュートはダイレクトシュートになるのでGKにとっては防ぎにくい。

 しかし、風間監督のチームは中央突破が主要ルートになっている。サイド攻撃もあるが、まず狙っているのは中央である。なぜならペナルティーエリアの三辺で一番長いのが横方向へ引かれた中央のラインだからだ。横幅は44.8メートルある。一方、サイドの縦のラインはそれぞれ18.5メートル。ゴールデンエリアに人とボールを送り込むには、正面の進入路が最も広い。

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