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Jリーグ 2年前

宮市亮はなぜ誰からも愛されるのか? 「必ず最後にシャーレを渡す」。さらに強まる横浜F・マリノスの結束【コラム】

text by 舩木渉 photo by Getty Images, Yokohama F.Marinos

「どんな時も君は一人じゃない」


【写真提供:横浜F・マリノス】



 マリノスでは長期離脱を要する大怪我を負った選手に向けて、これまでもメッセージ入りのTシャツが何度か作られてきた。例えば昨季後半戦を棒に振る左太ももの大怪我で手術を受けたDF畠中槙之輔に対して。あるいは2019年に右ひざ前十字じん帯損傷で全治8ヶ月と診断されたDF高野遼にも、メッセージ入りTシャツでエールが送られた。

 だが、宮市は「特別」だった。怪我の重さも去ることながら、ひざのじん帯を断裂するのは左右合わせて3度目。復帰まで想像を絶するような困難な道のりが待っているのは明らかで、手術が終われば先の見えない長いリハビリが始まる。

 そこでチームキャプテンのMF喜田拓也が先頭に立って「みんなの総意」で、特別なユニフォームを作ることに決めた。宮市の負傷がクラブから発表された鹿島アントラーズ戦の前日、7月29日のことだ。次の瞬間から大急ぎで準備が始まった。

 喜田やホペイロ(用具係)の緒方圭介、主務の山崎慎が中心となってユニフォームの胸にプリントするメッセージを考え、宮市本人だけでなく誰に対しても伝わりやすいよう日本語で「亮 どんな時も 君は一人じゃない」と入れることに決定。通常の背番号17のユニフォームはネームに「RYO」と入れているが、胸に「亮」があるため、特別仕様で「MIYAICHI」のネームシートを作成して両面でフルネームを演出することにした。

 喜田は「何が一番彼に刺さるか、彼自身の状況や背景もしっかりと考えて、どんな言葉やタイミング、出し方がいいのか考えました」と明かす。そして、ホペイロの緒方は並行して電話をかけまくった。

 必要な数のユニフォームがトップチーム用の予備だけでは足りず、クラブのグッズ販売用に卸していたものや、スポーツ用品店の在庫からも無理を言ってかき集めた。さらに胸にプリントする用の漢字のマーキングシートと「MIYAICHI」のネームシートを専門業者に大急ぎで発注した。

 翌朝、緒方が全ての材料を携えて日産スタジアム横のオフィシャルショップに駆け込み、専用の器具を使って胸のメッセージや背中のネームを貼り付ける。ユニフォームを集めて倉庫まで運び込んでくれたスポーツ用品店のスタッフや、朝までに特別なマーキングシートを製作して遠方から届けてくれた業者などの協力もあり、試合前に30枚分のメッセージ入りユニフォームが完成した。

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