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Jリーグ 2年前

宮市亮はなぜ誰からも愛されるのか? 「必ず最後にシャーレを渡す」。さらに強まる横浜F・マリノスの結束【コラム】

text by 舩木渉 photo by Getty Images, Yokohama F.Marinos

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 先月27日、日本全国に衝撃が走った。サッカー日本代表戦に出場していたFW宮市亮が、韓国戦の終盤に右ひざを痛めて負傷交代。医師の診断は「右ひざ前十字じん帯断裂」だった。これまで何度も大怪我を負ってきた宮市にとって「もう現役を終えよう」と考えたほどの最悪の結末だ。そこで横浜F・マリノスの選手・スタッフは大切な仲間を勇気づけるべく動いた。(取材・文:舩木渉)



マスカット監督も惚れ込む宮市亮の人間性


【写真:Getty Images】

 日産スタジアムの記者会見室で珍しい光景を目にした。横浜F・マリノスを率いるケヴィン・マスカット監督が、フィールドプレーヤー用の青いユニフォーム姿で現れたのである。

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 いつもなら夏用の白Tシャツとグレーのパンツという組み合わせがお決まりなので、特別な思いを抱いていることは明らかだった。

 ユニフォームの胸には「亮 どんな時も 君は一人じゃない」とプリントされている。先月27日のサッカー日本代表戦で右ひざ前十字じん帯断裂という大怪我を負ったFW宮市亮に対するエールだ。

 もともとは選手たちがウォーミングアップ開始前と試合後に着用する予定で特別に作られたものだったが、指揮官は自ら宮市へのメッセージが込められたユニフォームを着ることを望んだ。

 試合が終わるとマスカット監督は「ミヤはどこだ?」と、室内で観戦していた宮市を探し、ピッチへ呼び寄せる。選手たちの円陣が解けると、指揮官はユニフォーム姿で中継用のフラッシュインタビューを受け、記者会見にもそのままの装いで臨むことを強く望んだ。

 そして、その記者会見では「感情的になるところもあった」と長期離脱が決まった宮市への思いを熱っぽく語った。

「ミヤとは個人的にも長く話をした。プライベートな部分もあるが、みなさんに彼の考えを1つ共有できるとすれば、彼はすぐに自分のことだけではなくチームのことを考えていた。あれだけの大怪我をしている中で、他のことを考えられる。素晴らしい性格、人間性の持ち主だ。

彼は私に言ったんだ。『走れなくても、ピッチに立ってプレーできなくても、外からでも自分がチームのためにできることは全てやる』と。アンビリーバブル。彼がチームメイトであることを誇りに思うべきだし、サッカークラブにとって最高の人間性の持ち主だ。どん底にいても、2、3分後には彼はチームのためを思って行動で表現できる。大したものだ」

 プレーのクオリティのみならず人間性も惚れ込んでいるからこそ、マスカット監督は普段なら絶対に着ない選手用のユニフォームにも袖を通した。チームメイトたちやファン・サポーター、マリノスファミリーから激励を受けた宮市は、大粒の涙を流していた。

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