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Jリーグ 2年前

宮市亮はなぜ誰からも愛されるのか? 「必ず最後にシャーレを渡す」。さらに強まる横浜F・マリノスの結束【コラム】

text by 舩木渉 photo by Getty Images, Yokohama F.Marinos

なぜ宮市亮は特別な存在なのか


【写真:Getty Images】



 ホペイロとしてマリノス加入当初から宮市に寄り添い、向き合ってきた緒方は「本当に周りの人のおかげで、みんなが手伝ってくれたからできた」と、試合まで時間が限られる中で協力してくれた各方面への感謝を語った。そのうえで、こう続けた。

「亮の場合は、個人的な感情で言えば、同い年で、高校サッカーの時のアイドル。そこからずっと気にしてきた存在で、その選手が今はマリノスに来て一緒にやっている。小さい肉離れで1週間離脱するのも同じ怪我。大きな怪我をしたから特別なのではなく、自分にとって特別な存在だった選手が怪我をしてしまったということなんだよね」

 宮市が怪我をしたことが大きな関心を集め、前向きなエールを受けられるのには、いくつか理由があるだろう。1つはこれまで度重なる怪我に苦しめられてきたことを、多くの人々が知っていたから。ひざの前十字じん帯断裂は左右合わせて3度目、右に限っても損傷を含めれば3度目の大怪我になる。18歳でアーセナルに移籍し、いくつものクラブを渡り歩く中で、何度も絶望から這い上がって復活を遂げてきたストーリーがある。

 2つ目は、彼の人間性だ。誰とでも分け隔てなく接し、常にポジティブで、サッカーができる今を全身で楽しんでいる。困難にも全力で立ち向かっていく精神的な強靭さや、チームに対しての献身的な姿勢は自然と周りに伝播していく。マスカット監督が記者会見で言及したそれだ。

 鹿島戦でマリノスの選手たちは「宮市のために」という思いで団結し、普段以上のエナジーがピッチ上のプレーに表れていたように感じた。究極のチームプレーヤーである宮市を後押しするには、目の前の試合に勝利することが何よりも効果てきめんだと全員が理解していた。

 日本代表活動から戻って中2日で鹿島戦に先発したFW西村拓真は「サッカーができることにまず感謝だし、本当に身近な人(宮市)が一瞬でああいうことになってしまて、自分自身も改めて考えさせられましたし、疲れたとは言っていられない」と、フルパワーで躍動。86分までピッチに立ち、チーム最長の約11.4kmを走破した。

 同じく日本代表に参加していたMF岩田智輝も「亮くんのために出し切ろうと思っていましたし、どんな形でもいいから絶対に勝ちたいと思っていたので、それが結果につながってよかった」とフル出場&今季初ゴールでマリノスの勝利に大きく貢献した。

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