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Jリーグ 2年前

ガンバ大阪・宇佐美貴史の覚悟。指揮官に「代えないでください」と伝えた勝利の舞台裏【コラム】

シリーズ:この男、Jリーグにあり text by 藤江直人 photo by Getty Images

「キャプテンマークを巻いて試合に出ている立場として…」


【写真:Getty Images】



 ダワンを狙った正確なキックが導いた先制点に胸を張った宇佐美は、79分にFWパトリックが決めた貴重な追加点にも関わっている。ゴールシーンを巻き戻していくと、自身が起点になって発動させたショートカウンターから獲得した右コーナーキックに行き着く。

 ファーサイドを狙ったキックそのものは、マリノスのDF角田涼太朗にはね返された。しかし、ペナルティーエリアの左角あたりでボールを拾ったFW食野亮太郎が正確なクロスを供給。これがマリノスの選手たちの頭上を越えて、パトリックのもとへピンポイントで落ちてきた。

 宇佐美が右コーナーキックを蹴る直前に、食野はMF小野瀬康介に代わってピッチに入ったばかりだった。そして、食野を含めた若手のリザーブ陣へ、宇佐美は試合前から「途中から出た選手が結果を出すチームが、勝っていくチームなんだぞ」と檄を飛ばしていた。

 宇佐美の言葉通りに、後輩たちのなかで最も可愛がっている食野にアシストがついた。リハビリ期間中の5月に30歳となり、中堅の域に入って久しい宇佐美が喜ばないはずがない。

「いいパフォーマンスでしたね。キャプテンではないですけど、一応キャプテンマークを巻いて試合に出ている立場として、ベンチにいる若い選手たちに『全員でやっていこう』と伝えていた。そのなかで特に(食野)亮太郎にはそう話していたので、ああいう流れになったんでしょうね」

 キャプテンのMF倉田秋が戦列を離れているなか、今シーズンから初めて副キャプテンを務める宇佐美を中心に、マリノスに勝つ戦い方をイメージしてきた。これまでの試合映像などのスカウティングを介して、弾き出された結論は「弱者のサッカーに徹する」だった。

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