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Jリーグ 2年前

ガンバ大阪・宇佐美貴史の覚悟。指揮官に「代えないでください」と伝えた勝利の舞台裏【コラム】

シリーズ:この男、Jリーグにあり text by 藤江直人 photo by Getty Images

横浜F・マリノス戦の勝利が与える影響



 ひとつの白星、そして黒星が状況を大きく変える終盤戦。川崎に敗れた清水エスパルスが自動降格圏の17位に順位を下げた、入れ替わる形でガンバは16位へ浮上したが、現状のままではJ1参入プレーオフ決定戦に回る上、消化試合数は清水がひとつ少ない。

 ガンバはさらに同日に勝ったアビスパ福岡と湘南ベルマーレ、引き分けた京都サンガF.C.をとらえられなかった。今後は天皇杯とYBCルヴァンカップの決勝が週末に続く関係で、ガンバの次節は最下位のジュビロ磐田をホームのパナソニックスアジアム吹田に迎える月末の29日まで空く。

 その間に残留を争う北海道コンサドーレ札幌、ヴィッセル神戸、湘南、京都、清水、そして磐田が未消化試合に臨む。月末には再び状況が変わっている可能性もあるなかで、シュート数で6対22と圧倒され、ボール支配率でも後塵を拝したマリノス戦が心理面でもプラスに働くと宇佐美は言う。

「負けて中断に入るのか、勝っていい雰囲気で入るのかでオフの過ごし方も変わってくる。ホームでジュビロに勝つことだけを考えられるいい流れを、マリノスに勝てて作れたのはよかった。あとはいいオフを過ごして、いいトレーニングをして、ジュビロ戦へ向けて自信を持ってやっていくだけ。もっとボールを持って、相手のコートでプレーする時間を増やしていきたい」

 マリノス戦から一夜明けた9日から、ガンバは3日間のオフを設けた。試合後の取材を終え、心なしか右足をかばうように歩きながら帰路についた宇佐美も、再びリバウンドと戦っているはずだ。

 磐田とのホーム最終戦、そして県立カシマサッカースタジアムに乗り込む11月5日の鹿島アントラーズの最終節に連勝しても自力では状況を変えられない。しかし連勝しなければ、宇佐美をして「不本意ながら」と言わしめる、現時点の唯一の目標にすえられたJ1残留は手繰り寄せられない。

「来シーズンへつなげていくためにも、あと2つ、死ぬ気で頑張っていきたい」

 こう語った宇佐美は試合後の取材を通して、表情だけでなく声のトーンをも終始変えなかった。しかし、言葉に変換された思いの数々から伝わってきたのは、2度の海外移籍をへてジュニアユース時代から所属するガンバへ注ぐ深い愛と、残留への使者を担う覚悟と決意だった。

(取材・文:藤江直人)

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