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Jリーグ 2年前

ガンバ大阪・宇佐美貴史の覚悟。指揮官に「代えないでください」と伝えた勝利の舞台裏【コラム】

シリーズ:この男、Jリーグにあり text by 藤江直人 photo by Getty Images

宇佐美貴史が考える理想と現実



 受傷した翌3月7日に手術を受けたが、全治などは公表されなかった。退院とともに開始されたリハビリは、5月を境に室内から屋外へと切り替えられ、9月13日にはようやく全体練習へ合流した。強度が一気にはね上がる公式戦での反動は、宇佐美も覚悟の上だった。

「7ヵ月も遠ざかっていた分、試合が終わった後の反動はすごくあるかなと思っていた。ただ、その反動も試合を重ねていくにつれてどんどん小さくなっていくはずだし、やればやるだけコンディションも上がっていく。ケアを含めて自分の体をしっかりとマネジメントしながら、だましだましやらないといけない部分もあるけど、もうそんなことを言っている状況でもないので」

 懸命にリバウンドと戦いながら、日産スタジアムのピッチでプレーする自分の姿を前提として、マリノスに勝利するイメージをチームメイトたちと共有した。その結果として手にした勝利を、宇佐美は「今日のサッカーを、どの試合でもベースにするのはちょっと違う」と言う。

「いま現在のチーム状況と対マリノスを考えて、今日のサッカーはチーム全員が割り切っていた。理想だけを掲げてやっていける場合じゃないし、去年もそうだったけど、J1に残らなければいけない状況のなかで、相手のクオリティーの方が高いとしっかり認めなければいけなかった。そのなかで相手よりも走り、全員で守備を精いっぱいやっていかないと勝ち点を拾えなかった」

 自分たちをあえて弱者と位置づけたが、悔しくないはずがない。史上2チーム目となる2014シーズンの国内三冠獲得の立役者となり、2015シーズンの天皇杯連覇も知っている宇佐美だからこそ、来シーズン以降のリベンジを見すえる。その第一歩がJ1残留となる。

「残った上でクオリティーを上げて、マリノスがやっているようなサッカーを自分たちがしていかないといけない。上位にいるチームはボールも持てるし、攻撃のなかでどんどん違いも作り出せる。マリノスやフロンターレのサッカーはある種、僕たちにとってお手本のようなものですけど、下位にいる現状ではそこへトライできる段階ではないと思っている」

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