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Jリーグ 2年前

ちらつく降格…。清水エスパルスが繰り返す悪癖。悔しさと苛立ち、命運を握るのは…【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

苛立ち、悔しさ、詰めの甘さ

【写真:Getty Images】



 権田も失点シーンを淡々と振り返っていたが、清水がまたしても終盤失点という悪癖を繰り返してしまったのは事実。ゼ・リカルド監督も「逃げ切れないことに関しては今までで一番多くメディアから聞かれたこと。またしても終盤に失点してしまった」と苛立ちを募らせた。

 結局、試合は1-1のドロー。両者とも勝ち点1ずつ伸ばしたが、清水が33、磐田が29とダブル降格がより一層、現実味を帯びる結果となってしまった。山原怜音が「これほど目の前で勝ち点3を逃したなっていう感情になる試合はなかった。今季勝ち点2を逃してるって思いが一番強い瞬間です」と悔しさを爆発させたのも、頷ける話だ。

 ただ、清水の場合は2連勝すれば39まで勝ち点を上積みできる。もちろん鹿島アントラーズ、コンサドーレ札幌というのは難敵に他ならないが、残留への道が開ける確率が高いことを前向きに捉えるしかない。ベテランGK権田もそのあたりは心得ている様子だ。

「今日はチームとしてチャンスも沢山作れたし、内容は悪くなかった。ここまで来たら悲観しない方がいい。ああだこうだ言う前にみんなが練習から自分の仕事を100%やるしかない。僕も一番後ろにいますし、ちゃんと責任を負ってやっていきます」と努めて冷静にコメントしていた。

 若い頃の権田だったら、W杯直前にチームがJ2降格危機に瀕しているのに加え、自身のケガも完全に癒えていないとなれば、非常にナーバスになっていただろう。けれども、精神的落ち着きが生まれた今は、1つ1つの出来事に動じない強さと逞しさ、安定感が見て取れる。そのうえで飛び出すべきところでは思い切っていく大胆さと挑戦心も持ち合わせている。そういったリーダーが最後尾に陣取っているというのは、清水にとって本当に心強いはず。本人もW杯直前の入替戦まで戦い抜く覚悟を固めている。

 その彼を中心に今一度、チームの結束力を高め、終盤の失点という課題を乗り越えられれば、王国を代表するオリジナル10の名門はJ1残留に確実に近づく。全ての命運を左右するのが、代表守護神の統率力と鋭い反応だと言っても過言ではない。権田修一の真髄を示すべきなのは、まさに今だ。

(取材・文:元川悦子)

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