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Jリーグ 1年前

「大学サッカーで成長できるか」は根本的に間違っている。京都サンガ曺貴裁監督「考え方は日本もドイツも同じ」【育成主義3】

シリーズ:育成主義 text by 藤江直人 photo by Getty Images

流通経済大時代の教え子と「一緒に仕事できて嬉しい」



「当時は僕が何かをしたというよりは、中野監督や大学のスタッフの方々、そして選手たちから毎日のようにエネルギーをもらっていた。誰と出会うのか、何と出会うのかを僕自身にあてはめてみてもすごく大事な時間でしたし、その考え方は京都の監督を務めているいまも変わりません」

 1年での1部復帰を果たした教え子たち、2020年度の4年生と3年生のなかから総勢17人がプロのステージへ進んだ。FW満田誠(サンフレッチェ広島)やMF伊藤敦樹(浦和レッズ)、MF菊地泰智(サガン鳥栖)との立場を変えての邂逅を、曺監督は嬉しそうに振り返る。

「彼らがああやってプロの世界で楽しそうにサッカーしているのを見ると、もちろん対戦するときはライバルですけど、僕自身はすごく嬉しい気持ちにはなりましたよね」

 なかには指揮官のたっての希望で、京都の一員になったかつての教え子もいる。2021年にベガルタ仙台入りしたDFアピアタウィア久は、昨シーズンから京都へ完全移籍。昨シーズンに鳥栖入りしたMF佐藤響は昨年6月に京都へ期限付き移籍し、今シーズンからは完全移籍に切り替えた。

「アピに関しては、あれぐらい高い身体能力を持ったセンターバックはなかなか日本にいないので、クラブ側に相談して『ぜひ獲得してほしい』とお願いしました。ひとつ下の響のポテンシャルも間近に見てきた僕が一番よくわかっていたし、ウチのスタイルにも合うし、伸びしろもまだまだあると思ったので。アピは怪我の期間がちょっと長びいて、ようやく復帰してきましたけど、僕のなかではやってくれないと困る選手ではありますね。またここで一緒に仕事できて嬉しいと思っていますけど、彼らはどうでしょうか。うるさいと思っているかもしれないですね」

 こう語った曺監督はどこか嬉しそうに表情をほころばせたが、もちろん特別扱いはしない。アカデミー出身でも高卒でも大卒でも、若手でも中堅でもベテランでも、日本人選手でも外国人選手でも。縁あって2023シーズンをともに戦う選手たちが切磋琢磨し、京都に来てよかったと毎日のように感じ、すべての戦いを終えたときに成長したと手応えを感じられる環境をコーチ陣と作り上げていく。

(取材・文:藤江直人)

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【了】

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