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Jリーグ 10か月前

横浜F・マリノスがはまった「アリ地獄のような罠」。町田ゼルビアが講じた周到な策とは【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

FC町田ゼルビアが敷いた蟻地獄のような罠

東京ヴェルディ戦で作戦を練る黒田剛監督と金明輝コーチ
【写真:Getty Images】



「トップとシャドーの3人でしっかりとはめ込んでいけば、あとは横へスライドしていくことによって割とプレッシャーをかけ続けられる状態にありました」

 激しいプレスをロングボールで回避しようにも、最終ラインでにらみを利かせる、高さと強さを兼ね備えた3人がどうしても気になる。同時にケヴィン・マスカット監督のもと、J1戦線で貫いてきたスタイルを意地でも通用させようと、マリノスは自軍のゴール前からショートパスを繋ぎ続けた。

 しかし、マリノスのこだわりも、町田にとってはある意味で想定内だった。3バックが放つ存在感でロングボールを封印させ、前線の3人が“一の矢”と化すハイプレスでボールを前へ運ばせない。2-0で折り返した前半のシュート数は、町田の10本に対してマリノスは屈辱的な0本だった。

 ショートパスを繋いでもダメだし、ロングボールも大半が弾き返される。マリノスがリーグ戦と同じスタイルで臨んでくる、というスカウティングも受けて採用された3バックは、まるで蟻地獄のような罠でもあった。しかも、黒田監督は最終ラインに対して「引くな」と厳命していた。

 名前に怯んで引いてしまえば、マリノスはかさにかかって攻め込んでくる。町田が共有していた戦略は38分に、あわや追加点というシーンを生んだ。前に出る積極的な守備からインターセプトに成功した池田が、そのままボールを運んで敵陣の中央あたりから利き足の左足を一閃したのだ。

 クロスバーを直撃した惜しい一撃を、池田は「状況に応じて判断した」と振り返っている。

「相手も前がかりで、ゴールキーパーも前に出ているのが見えていたので」

 黒田監督は同時にプランBも用意していた。ナイトゲームとはいえ、夏場の試合ではどうしても暑さが懸念される。高温多湿の条件下でハイプレスを仕掛け続ければ、選手たちは体力を著しく消耗する。ゆえにミドルサードでプレスを仕掛ける戦法も準備してきたと黒田監督は明かす。

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