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Jリーグ 8か月前

「特別な気持ち」香川真司と柴崎岳の数奇な運命。2人に共通する「僕が帰ってきた意味」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

すれ違い続けた2人のキャリア



「僕が中学や高校のときから日本代表であるとか、世界の舞台で戦っていたプロフェッショナルな選手ですし、華やかな世界だけじゃなくて、非常に過酷な環境でプレーしてきた経験もある。セレッソに帰ってきても自分のやるべきプレーに集中して、日々の練習はもちろん、こういった試合でもプレーしているのを見ると、あらためて尊敬すべきところがたくさんある選手だとあらためて思いました」

 FCみやぎバルセロナユースに所属していた香川は2006年1月、高校3年生に進級する直前にセレッソへ加入。J2を戦った2007シーズン以降の3年間で48ゴールをマークし、J1へ昇格した2010シーズンには11試合で7ゴールの成績を残しながら、7月にボルシア・ドルトムントへ移籍した。

 青森県の強豪・青森山田高から柴崎が鹿島入りしたのは2011シーズン。入れ違いの形でプロになった柴崎は、175cmと同じ身長の香川がヨーロッパで見せるプレーを注視するようになった。

 そして、J1年間王者と天皇杯の二冠を置き土産に、柴崎も2017年1月にヨーロッパへ旅立つ。テネリフェからヘタフェとスペインでプレーした柴崎と、ドルムントからマンチェスター・ユナイテッド、再びドルトムントと移った香川は2019/20シーズンに初めて同じリーグで邂逅した。

 柴崎は2019年7月、ラ・リーガ2部のデポルティボ・ラ・コルーニャに移籍。約1か月後の同年8月には、ドルトムントで構想外になっていた香川がラ・リーガ2部のレアル・サラゴサへ加入した。

 2018年のFIFAワールドカップ・ロシア大会。ベスト16進出を果たした日本代表で、柴崎はボランチ、香川はトップ下として躍動した。しかし、ラ・リーガ2部を舞台にした初めてのマッチアップを前に、柴崎は下位に低迷するデポルティボでポジションを失い、香川はコンディション不良に悩まされていた。

 苦戦の跡を物語るように、ラ・リーガ2部の直接対決で2人はすれ違いが続いた。

 デポルティボのホームで行われた2019年12月8日は、柴崎がリザーブだったのに対して香川は後半終了間際から出場。サラゴサのホームだった2020年2月23日は香川がリザーブに甘んじ、先発を果たした柴崎は60分に2度目の警告を受けて、キャリア初の退場処分となっていた。

 ピッチ上で対峙しなかったとはいえ、当時の2人は同じスタジアムで同じ時間を共有した。そのときに言葉をかわさなかったのか、という問いに柴崎は苦笑しながら首を横に振った。

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