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Jリーグ 8か月前

「特別な気持ち」香川真司と柴崎岳の数奇な運命。2人に共通する「僕が帰ってきた意味」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

鹿島アントラーズは「上を目指して戦える」



「タイトルを取ること。それしかない。どのような道のりや途中経過であれ、最終的にそこにたどり着かなければほとんど評価されない。というよりも、それこそが僕が帰ってきた意味になると思っているので、チームのみんなとそれを成し遂げたいという思いが強いですね」

 鹿島はクラブの悲願だったAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を2018年に制した。しかし、国内タイトルに限れば、柴崎が在籍した2016シーズンのJ1年間王者と天皇杯が最後となっている。

 今シーズンも2つのタイトルをすでに失った。天皇杯は7月の3回戦で、昨シーズンに続いてPK戦の末にJ2のヴァンフォーレ甲府に屈した。YBCルヴァンカップでは柴崎が公式戦へ復帰した、10日の名古屋グランパスとの準々決勝第2戦を延長戦の末に落とし、無念の敗退が決まっている。

 だからこそ、可能性が残されるリーグ戦にすべてを注ぐ。第27節では首位のヴィッセル神戸と3位の名古屋が敗れ、2位の横浜F・マリノスも引き分けて勝ち点を伸ばせなかった。そして10人で1点を死守した鹿島はセレッソだけでなく名古屋、浦和レッズをも抜いて3位に浮上した。

 86分からは最終ラインを5枚にスイッチ。粘り強い守備で1点を守り抜いた試合後に、岩政監督は「ウチの選手たちも、ファン・サポーターも本当にすごい」と興奮した口調でこう続けた。

「また鹿島の歴史と伝統を見た気がした。これでいよいよ上を目指して戦える」

 上とは要は優勝を指す。残り7試合で神戸との勝ち点差は6ポイント、マリノスとは5ポイント差に縮まった。リーグ戦復帰を勝利で飾った柴崎も、静かな口調のなかに闘志をのぞかせる。

「まあ、ひとつ勝っただけなので。これを次につなげないと、今日の勝利は意味のないものになってしまうし、すべては最終的な結果につなげるためにやっているので。もちろん嬉しいことではありますけど、そこまで満足というか、ものすごく喜んでいる、というわけではないですね」

 対照的に数的優位を生かせずに4連勝と3位浮上を逃し、2017年8月から続く、鹿島とのリーグ戦での連続未勝利が13試合(2分け11敗)に伸びた悔しさからか。香川は短い言葉を残しただけだった。

「今日は勘弁してください」

 両者のコメントが直接対決の重さを物語る。そして、鹿島の今後にはビッグマッチが待つ。まずは24日の次節でマリノスをホームに迎える。10月21日には国立競技場で神戸に臨む。タイトル獲得へ誰よりも飢えている男、柴崎が加入した鹿島が放つ存在感が一気に大きくなってきた。

(取材・文:藤江直人)

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【了】

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