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Jリーグ 7か月前

「人生で一番しんどかった」浦和レッズの不安と覚悟と涙。交錯した4人の感情とは【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

浦和レッズに訪れた「確定演出」



「思い切り当たっていましたし、相手のカウンター中にプレーが止まったときに、ほぼ『確定演出』が流れているような感じを受けたので。PKだな、とは思っていました」

 2戦合計スコアを1-1の振り出しに戻す、第2戦における浦和の先制点もPKによってもたらされた。浦和の猛攻が続いていた61分。きっかけを作ったのは、ここでも荻原の思い切りのいいプレーだった。

 マリノスに奪われたボールを、髙橋が高い位置でカット。こぼれ球をMF小泉佳穂が相手ペナルティーエリア内の左側へ通したところへ、あうんの呼吸で走り込んできた荻原が体勢を崩しながら、ワンタッチで利き足の左足を振り抜く。シュートにも映った弾道が、マリノスゴールを急襲した。

 これはマリノスの守護神、一森純が必死に伸ばした右手でパンチングした。ファーサイドへ流したボールへ、誰よりも早く反応したのが浦和レッズユース所属の高校3年生、MF早川隼平だった。

 身長163cm体重65kgの小さな体ながら、それでいてペナルティーエリア内でしっかりとボールを収めた早川を、セカンドボール争いで遅れを取ったマリノスのDF永戸勝也が背後から倒してしまう。PKが宣告された瞬間、荻原はピッチ上で仰向けになりながら両手でガッツポーズを作っていた。

「何か体勢が流れちゃって、中は見えていなかったんですけど、とりあえずファーにちょっとチップ気味で上げようと思って。相手のキーパーが弾いて、たまたまいいところにボールがこぼれていきましたけど、ああいうシーンを数多く作り出せたことが、今日の結果につながったと思っています」

 シュートではなくクロスだったと荻原が明かせば、8月にユース所属のままプロ契約を結び、トップチームの公式戦に出場できる2種登録選手として引き続き帯同している早川も続いた。

「相手のキーパーが弾いたセカンドボールを、先に相手に触られていたらノーチャンスで終わっていたので、そこに関してはうまく反応できてよかったと思っています」

 YBCルヴァンカップでは今シーズンから、各クラブに「U-21(21歳以下)の日本人選手1人の先発出場義務ルール」が再び課されている。コロナ禍で一時凍結されていた将来有望な若手を育成する施策のもとで、早川は準決勝第2戦までに同カップで6試合に先発。1ゴールをあげていた。

 しかし、第1戦では浦和のコーナーキックで競り合った際に左足首を痛め、わずか18分間での退場を余儀なくされていた。中3日での強行出場。痛みがないと言えば嘘になる。早川は言う。

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