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Jリーグ 6か月前

「あの決断を正解にできた」アビスパ福岡、背番号6が明かす指揮官への本音とは【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「そういう考え方で(タイトル)は取れない」



 大きいという対象には、クラブの財政規模も含まれてくる。例えば日本を代表するビッグクラブの浦和は、2002シーズンのヤマザキナビスコカップ(現ルヴァンカップ)決勝で鹿島アントラーズに破れた1年後に、同じ舞台で鹿島に雪辱して初タイトルを獲得。いまでは国内外で10冠を数える。

 史上最多の20冠を誇る鹿島は、Jリーグ初代王者をかけた1993シーズンのチャンピオンシップでヴェルディに敗れてから、初タイトルとなる1996シーズンのJリーグを制するまで3年を要した。川崎フロンターレはヤマザキナビスコカップ決勝で敗れた2000シーズンから、J1を制して悲願の初タイトルを手にするまで実に17年を要し、その間に「シルバーコレクター」と呼ばれ続けた。

 他のクラブの軌跡を把握した上で、長谷部監督は福岡が初めて迎えたタイトル獲得のチャンスへ、勝利への執念をむき出しにしながら檄を飛ばし続けた。何がなんでも浦和に勝つんだ、と。

「いずれタイトルを取れると考えているクラブもあると思うが、そういう考え方では取れない。ここで取れなければ、何年も何年もずっと取れないままだと。来シーズン以降もタイトルを狙えるチームになるかどうかの瀬戸際というか、ライン上にいたと思っていたなかで、今日の勝利で歴史が変わりました。クラブはさらに前進して上を目指していく。そういう方向に進める状況を非常に嬉しく思っています」

 絶対に勝つために浦和対策を徹底し、前のシャドー抜擢を介してチーム全体へ明確なメッセージを伝えた。以心伝心とばかりに、決勝戦のMVP獲得を介して期待に応えた前が本音を明かした。

「この試合で僕をシャドーに使うのもなかなか勇気がいることだと思いますけど、そのなかでうまく点を取れたし、シゲさんに優勝カップを掲げてもらって、僕としては本当に嬉しく思っています」

 初タイトルに王手をかけてから、一発回答で手にしたカップの重みがこれからの福岡を内側から変えていく。そこには偶然による出会いから6年もの歳月をかけて育まれ、特に言葉をかけなくてもお互いにわかりあえる、長谷部監督と前の間に存在するあうんの信頼関係が力強く脈打っている。

(取材・文:藤江直人)

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