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Jリーグ 2か月前

異例の形。浦和レッズはなぜ渡邊凌磨のSB起用にこだわるのか。「話し合いの中で…」指揮官からのメッセージと狙い【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

「僕は『攻撃の選手だ』と思っているわけではない」



「昨年プレーしていた左SBが2人いなくなり(明本考浩と荻原拓也)、どうするかという話し合いをした中で、攻撃的な力がある彼を使うのはどうかという話になりました。途中から入る大畑も非常にいい影響力をもたらしていますし、オプションを与えてくれています。左ウイングに松尾(佑介)、関根、オラ(・ソルバッケン)が戻って来れば、さらにオプションが増えます」

 つまり、左SB要員には大畑もいるが、パリ五輪代表候補の彼は4月のAFC・U-23アジアカップ(カタール)などでチームを離れる可能性もある。そこは1つのリスクだ。さらに言うと、左ウイング候補には大久保、松尾、関根など複数の選択肢がある。「ならば、攻守両面で仕事のできる渡邊は後ろで使って、そこで成長させていく」ということなのだろう。

 渡邊自身も「僕は『攻撃の選手だ』と思っているわけではなくて、『攻撃の選手だったから、やらなくてはダメだよね』というマインドで、今はSBを極めようと思っています」と覚悟を決めている。その能力を引き出すべく、ヘグモ監督もトライを続けている。時に前でも使える彼の存在が浦和浮上のカギになりそうな予感は大いに見て取れた。

 渡邊が攻撃の起爆剤になったことも奏功し、68分には前田のドリブル突破からのシュートが福岡DF井上聖也の手に当たり、VAR判定の末にPKに。これをサンタナが見事に決めて、浦和が2-1と逆転に成功。今季ホーム初勝利を飾ることができた。

「(5試合終わって2勝2分1敗は)意外とポジティブ。苦しみながらも8ポイント取れてるのは悪くないかなと思います。欲を言えば、10ポイントぐらい欲しかったですけど、正直、こんなもんかなっていう感じですね。大事なのはここからのリアクション。どういうカーブを描いていくかというのが重要ですね」とキャプテン・酒井宏樹も前を向いていたが、序盤の生みの苦しみをどう今後につなげていくかが何よりも肝要だ。

 その過程の中で、左SB渡邊の重要度はより増していくはず。際立った攻撃力を持つ彼をうまく使いこなし、浦和の左サイドがJ1屈指の破壊力を示すようになれば、ヘグモ監督のサッカーは完成に近づく。そういう意味でも注目度大だ。

(取材・文:元川悦子)

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