フットボールチャンネル

Jリーグ 2か月前

22歳・染野唯月は「ひと皮むけつつある」。東京ヴェルディを勝たせるために。使われ続けている意味への自答【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

染野唯月は「ひと皮むけつつある」

東京ヴェルディを率いる城福浩監督
【写真:Getty Images】



「ストライカーは誰しも、マイボールになったときに相手ゴール前で自分のエネルギーを使いたがる。つまり守備ではエネルギーを使いたがらない。ただ、今日の試合はわれわれがボールを奪わないと攻撃ができない状況になり、そのなかで奪いに行くスイッチの先頭に立つ姿を染野は具現化してくれた。だからこそ最後に彼のところへボールがいったと思っている。自分の得意とするものだけにエネルギーを溜めておく、といった思考から彼はひと皮むけつつあるし、これを大事にしていってほしい」

 城福監督から課されていたタスクを、攻守両面でようやく完遂できた。さらに染野が口癖のように繰り返していた「チームが苦しいときに、点を決められる選手にならなきゃいけない」もクリアできた。

 開幕以降の4試合でヴェルディは2分2敗、5得点に対して7失点の数字を残している。しかし、今シーズンに京都から期限付きで加入し、ともに2ゴールずつをマークしているMF山田楓喜とFW木村勇大が、両チーム間で交わされた契約により京都との第5節ではプレーできなかった。

「自分が先頭に立って戦わなきゃいけないし、試合を引っ張っていかなきゃいけない。そこは誰と誰がいないとかは関係なく、自分がコミュニケーションを取っていかなきゃいけない」

総得点の8割を叩き出している2人が、そろってピッチに立てない。まさに「チームが苦しいとき」に鹿島アントラーズ時代の2022年5月25日のサガン鳥栖戦での初ゴール以来、674日ぶりとなるJ1でのゴールを決めた。それも2発。それでも引き分けにとどまった結果が染野にさらに前を向かせる。

「自分がもう1点取れた場面もあった。もっと決めなきゃいけないし、チャンスを作らなきゃいけない。そういうシーンをこれからも増やさなきゃいけないし、そこは練習から自分のなかで意識していきたい」

 中断期間中にはU-23日本代表に招集され、22日のU-23マリ代表戦では後半から、25日のU-23ウクライナ代表戦では先発して45分間ずつプレーした。ともにゴールは奪えなかったが、前線からの守備でいっさい手を抜かなかった染野は、プレスバックからのボール奪取でカウンターの起点にもなった。

 城福監督が「ひと皮むけつつある」と目を細めたエネルギーの使い方は、今夏のパリ五輪出場を目指す代表チームの活動でもはっきりと実践されていた。だからこそ、再開後の初戦でゴールできた価値は大きい。自問自答から少しだけ解放された染野は、自身のなかで生じる変化についてこう言及している。

1 2 3 4 5 6 7

KANZENからのお知らせ

scroll top