「J2とはまったく違う。それでも…」
「昇格して勢いのあるチームだし、僕もその勢いに乗っかりたい、という思いをもってきました。僕自身は全盛期のエンゴロ・カンテ選手が大好きでしたし、攻撃でいえばケヴィン・デ・ブルイネ選手のように、周囲を生かしながら自分も生きるようなプレースタイルを目指してきました」
リーグ戦では開幕から5試合続けてベンチに入れなかった。3月16日の京都サンガF.C.戦との第6節で初めてリザーブに名を連ねると、同26日のSC相模原とのYBCルヴァンカップ1回戦で先発フル出場。3日後の湘南ベルマーレとの第7節で、82分から途中出場してJ1リーグでデビューを果たした。
少しずつプレータイムを増やして迎えた、4月29日のFC東京との第13節。リーグ戦出場4試合目にして初先発を射止めた弓場は、両チームで最長となる12.044kmの総走行距離をマークした。
さらに1-0で迎えた79分には自陣の中央で、高橋祐治が頭でクリアしたボールを半身の体勢になって右足でトラップ。さらに間髪入れずに左足を振り抜き、センターサークル内にいた乾へ縦パスを通した。これが乾のドリブル突破によるカウンターとなり、勝利を決定づける2点目が生まれた。
「守備の強度に関して、相手を潰すという部分はやれている感覚がある。ただ、ひとつのパスミスが致命的になる部分は、J2とはまったく違う。それでも左利きの選手にしか出せない角度のパスがあるし、前節のタカシくんへの縦パスはやはり左利きであったからこそ、とっさに出せたパスだと思っています」
時間の経過とともに弓場がJ1のレベルに順応した証が、FC東京戦での先発フル出場であり、アシストであり、中3日で迎えた名古屋戦での先発だった。試合そのもの名古屋のマンツーマンディフェンスにチームとして活路を見出せず、今シーズン最多の3失点を喫し、攻めても無得点のまま連勝が3で止まった。
それでも、前半でチーム最多の5.8kmを走破した点を含めて、弓場が描いている軌跡は色褪せない。
「結果がすべての世界なので、初先発した前節は走行距離や守備の部分で貢献できた一方で、こうして3失点して敗れれば僕を含めて出ている選手の責任が問われる。点を取られなければ負けないので、次の試合までにしっかりと改善して、試合に出る選手がしっかりとプレーできるようにしていきたい」
次節は中2日の6日に柏レイソルのホーム、三協フロンティア柏スタジアムに乗り込む。6位と踏ん張る清水の中盤に、左利きならではの独特のリズムと衰え知らずの運動量、そしてボール奪取を含めた強度の高い守備力を加え、ピッチを離れれば両耳にピアスを輝かせるお洒落も忘れない弓場がピッチに立てば、J2を含めてリーグ戦で節目の出場100試合に到達。またひとつ、キャリアにおけるマイルストーンを刻む。
(取材・文:藤江直人)
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