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代表 10年前

[惜しくもW杯出場ならず]小国サッカー界の優等生、アイスランドサッカー成長の軌跡

text by 長束恭行 photo by Yasuyuki Nagatsuka

アイスランドの観客が好むのはアグレッシブな肉弾戦

[惜しくもW杯出場ならず]小国サッカー界の優等生、アイスランドサッカー成長の軌跡
「ケプラヴィーク対ストヤルナン」の試合前に、少年たちがスタンドの座席を掃除する【写真:長束恭行】

 対戦相手はストヤルナン。攻撃的サッカーを信奉し、2009年に一部初昇格。サンフレッチェ広島が模倣した「魚釣り」をはじめ、「水洗トイレ」「ランボー」など独創性あるゴールパフォーマンスを次々に編み出し、一昨年にユーチューブで世界中に注目されたクラブだ。

 昨年2月の日本戦でハンドスプリングスローを繰り出し、長居スタジアムの観客を賑わせたMFステインソール・ソルステインソンも同クラブの出身だったりする。

 キープレイヤーはワントップの大砲ガルザル・ヨーハンソンと10番の技巧派MFハトルドール・オルリ・ビョルンソンで、共にアイスランド代表として日本戦に途中出場した。試合は開始早々に動く。

 ケプラヴィークのGKオマール・ヨーハンソンがゴール前で相手選手を倒すや、主審はペナルティースポットを指差した。ハトルドール・オルリがPKを右に蹴り込んでストヤルナンが前半5分で先制。選手達はパフォーマーから卒業したらしく、ハイタッチでゴールを祝った。

 アイスランドの観客が好むのはアグレッシブな肉弾戦だ。ハイボールは強風で流されるため、グラウンダーのパスを通すしかない。そして対面する相手は容赦ないスライディングタックルが浴びせられる。

 前半はカウンター頼りだったケプラヴィークは繋ぐサッカーに後半切り替えたものの、同点の好機を二度逃したのが響いた。結果は0-1。喜び勇むストヤルナンのサポーター集団にハトルドール・オルリが近づき、抱擁と握手を重ねていく。タイムアップ時刻は21時7分。簡素なスタジアムに照明設備はないが、北緯64度のケプラヴィークの空はまだ明るい。

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