[惜しくもW杯出場ならず]小国サッカー界の優等生、アイスランドサッカー成長の軌跡

2013年11月20日(Wed)10時51分配信

text by 長束恭行 photo Yasuyuki Nagatsuka
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サッカーの水準を高めるために必要なこと

[惜しくもW杯出場ならず]小国サッカー界の優等生、アイスランドサッカー成長の軌跡
IBVコーチのカジッチ氏。昨年は監督解任後の残り3節を指揮し、シーズン後に中堅ヴァールルのコーチに就任した【写真:長束恭行】

 私がKRを訪れた日はマッチデイだった。対戦相手はアイスランド本島の南、ヴェストマン諸島のIBV(アイスランド語で「スポーツコミュニティ・ヴェストマンナイヤ」の略)。アイスランド・リーグが誕生したのは1912年、IBVが海を渡ってレイキャビク遠征したのがきっかけだ(初優勝はKR)。IBVは唯一本島以外に所在する一部クラブで、アウェイの度にフェリーとバスで遠征する。

「今はレイキャビク周辺に一部リーグのクラブが集中しているが、本島の真裏にあるソール・アーレクイリが参入した2011年はそこまでの移動が大変だった。あと、2010年春にエイヤフィヤトラヨークトル火山が噴火した際も、ヴェストマン諸島は火口からそう遠くないだけに混乱したよ」

 IBVで2年半に渡ってアシスタントコーチを務めるモンテネグロ人、ドラガン・カジッチはアイスランド滞在歴5年。コーチング学研究では定評のあるベオグラード体育学部を卒業、セルビアの数クラブを指導したのち、2007年にアイスランドへ渡ってきた。

 IBVは彼にとって同国三番目のクラブ。参謀役を務めるだけでなく、ユース部門を統括する立場にある。「アイスランドは戦術面で少し遅れているところはあるが、選手の呑み込みは早い。

 また地元の指導者も外国人コーチを歓迎し、好んで私とディスカッションしてくれる」

 サッカーの水準を高めるためにはインフラに加えて優秀なコーチが必要ということで、アイスランド・サッカー協会はコーチ育成に熱心だ。現存コーチの8割は協会主宰の講習を受け、4割以上がUEFAのBライセンスを取得。選手数当りのコーチ数も北欧随一で、子供に対するコーチングはボランティアではなく、報酬を得る一職業として認知されている。

「漁業や観光がとりわけ盛んなヴェストマン諸島でも、サッカー選手の多くが何かしらの副業をしている。IBVも総合スポーツクラブで、島民は余暇をスポーツで楽しんでいるんだ。

 試合になれば、おらが島のチームを応援しようと観客がわんさと訪れる。ホームシックはあるかって? ベオグラードにいる家族とはスカイプで連絡が取れるし、バスケットボールのチームにはセルビア人もいるから大丈夫さ」

 カジッチ氏は祖国から遠く離れたアイスランドでもサッカーライフを満喫している。

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