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代表 10年前

[惜しくもW杯出場ならず]小国サッカー界の優等生、アイスランドサッカー成長の軌跡

text by 長束恭行 photo by Yasuyuki Nagatsuka

クラブ破綻のない幸せな国

[惜しくもW杯出場ならず]小国サッカー界の優等生、アイスランドサッカー成長の軌跡
KRのクラブハウス正面には、クラブ創立100周年を迎えた1999年に設けられたモニュメントが立つ【写真:長束恭行】

 地熱を利用したクリーンエネルギーを有効活用し、失業率は極めて低く、国民一人当たりの所得は世界トップクラス。経済的にも優等生だったアイスランドだが、リーマンショックの煽りを受けて大手銀行が次々と破綻し、国内経済は深刻な状況に陥った。

 大胆な管理政策と通貨切下げによる輸出好調で急激な回復を成し遂げてはいるが、国を襲った経済危機は「クラブ運営にも爪痕を残した」(リュビチッチ談)。

 だが、アイスランドでクラブ破綻の話が聞かれないのは、サッカーに限らずスポーツそのものがビジネスと縁遠いからだ。一部リーグはセミプロで、選手の兼業も一般的。

 私はアイスランド最古のクラブで、同国最多25度のリーグ優勝を誇るKRのクラブハウスに足を踏み入れた。KRとはアイスランド語で「フットボールクラブ・レイキャビク」の略称。トップチームの選手全員がプロ契約を結んでいる。

 案内役はクラブ運営に長年携わるヨナス・シグルズソン氏だ。「どんな競技であれ、どこもKRに対抗意識を燃やしてくるよ。なぜならば我々はアイスランド最大のクラブだからね。

 アイスランドは実に国民の12~15%がスポーツクラブに登録している。KRは元々サッカークラブとして誕生したが、その後は市民による総合スポーツクラブになった。バスケットボール、ハンドボール、バドミントン、ボーリング、卓球、水泳、スキー…。珍しいところだと日本のスモー(相撲)に似た『グリマ』がある。

 KRには競技者が5人しかいないがね(笑)」競技施設が集約されたクラブハウスには、「西町の皇帝」と呼ばれるKRの歴史と栄光を物語るトロフィーや写真があちらこちらに飾られていた。

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