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Jリーグ 1年前

「自分のことだけ考えればいい」京都サンガ曺貴裁監督が21歳MFを主将にした理由「負担はかけない。でも…」【育成主義1】

シリーズ:育成主義 text by 藤江直人 photo by Getty Images

「自分のことだけを考えてやればいい」



「でも、僕は航にはキャプテンを任せていないんですよね」

 湘南を率いて監督業をスタートさせ、J2リーグを戦った2012シーズン。キャプテンのMF坂本紘司(現湘南代表取締役GM)がピッチに立たない試合では、ユースからトップチームに昇格してまだ2年目で、まだ19歳だった遠藤にゲームキャプテンを任せたケースがあった。

 ただ、当時の肩書きはあくまでも副キャプテン。32試合に出場して、チーム内で2位タイの7ゴールをあげた遠藤のゲームキャプテン指名に関して、曺監督は後にこう振り返っている。

「19歳のときの航はほとんど世の中に出ていなかったし、ノープレッシャーでやっていましたね」

 年齢を比べれば川﨑が上だが、J1を戦う舞台でキャプテンに抜擢され、さらに今年はパリ五輪出場をかけたU-22日本代表の活動も本格化してくる。4月からは立命館大学産業社会学部の4回生に進級するなど、文武両道を極めようと懸命な川﨑を曺監督はこんな思いで見つめている。

「自分のことだけを考えてやればいいと言っています。キャプテンになったからといってチームに思いを馳せて、みんなをまとめて選手ミーティングをやれと言うつもりもない。自分のためにやることがおそらくチームのためになるし、そうしていればチーム全体のことも見えてくる。それでも周りからはキャプテンと見られるなかで、その役割が自分自身を伸ばしていく、という話はしています」

 あえて余計な負担はかけない。それでも、期待を込めた眼差しは注ぐ。球際の強さとボール奪取能力に長け、前への推進力も兼ね備える21歳の川﨑がキャプテン拝命を触媒として、さらに飛躍してほしいという希望を曺監督から託されながら、京都の新シーズンが間もなく幕を開ける。

(取材・文:藤江直人)

【第2回】京都サンガ曺貴裁監督の組織論「役職があれば言葉に重みが乗る」「こいつはものになる」と思った瞬間
【第3回】「大学サッカーで成長できるか」は根本的に間違っている。京都サンガ曺貴裁監督「考え方は日本もドイツも同じ」

【了】

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