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Jリーグ 3か月前

無給、メールで逆オファー…。ファンウェルメスケルケン際がゼロから築いたキャリア「逃げることを意味する」の真意【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

まるで『キャプテン翼』のワンシーン…



「こぼれ球を狙っていたので、実際に転がってきてくれたのは嬉しかったです。そのなかで運もありましたが、結果的にゴールを取れて、それをチームメイト全員でシェアできたのも嬉しかったです」

 決勝弾となった移籍後初ゴールをこう振り返った際は、満開の笑顔を浮かべながら自軍のベンチへ一直線に走り、リザーブメンバーと喜びを分かち合ったゴールパフォーマンスの意味を明かした。

「試合前から点を決めたらベンチの方に走って、みんなで分かち合いたいと思っていました。本当に取るとは思っていなかったんですけど、点を取れてそれをできたことを本当に嬉しく思っています」

 珍しいゴールは、人気サッカー漫画『キャプテン翼』のワンシーンを思い起こさせた。中国代表のFW肖俊光が得意とした必殺シュートである、相手の強烈なシュートを至近距離で蹴り返し、威力を増加させる「反動蹴速迅砲」が再現されたと、X(旧ツイッター)上で瞬く間に騒然となった。

 右サイドバックという際のポジションを含めて、厳密に言えば「反動蹴速迅砲」ではない。それでも名刺代わりとなった先制弾には、こぼれ球をしっかりと予測していたポジショニングと、右足を振り抜こうとしていた山口の正面へ、恐れずに飛び込んでいった際の勇気によって生み出されていた。

 父親の母国であるオランダでプロのキャリアをスタートさせた際は、1部のエールディヴィジ、2部のエールステディヴィジの延べ5クラブで約8年半にわたってプレーしてきた。一転して完全移籍での川崎加入が発表されたのは、今シーズンの新体制発表会見翌日の1月21日だった。

 入団テストをへて昨夏に加入した、エールディヴィジのNECナイメヘンでのシーズンを半分残した状況で母親の母国でのプレーを決めた際は、川崎の公式サイト上でこんなコメントを残している。

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