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Jリーグ 3か月前

無給、メールで逆オファー…。ファンウェルメスケルケン際がゼロから築いたキャリア「逃げることを意味する」の真意【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「川崎フロンターレの選手たちは…」ファンウェルメスケルケン際が感じたこと



「フロンターレの選手たちは、全員の質が本当に高い。日々の練習から100%、120%でやっている。そのなかですべての選手たちが、気を引き締めながら毎日を過ごしている」

 プレーする国に関係なく、常に切磋琢磨しながら、競争意識が極めて高い環境こそが自分をさらに成長させてくれる。際が移籍先の基準にすえた層の厚さを物語るように、ACLの山東泰山戦から先発全員を入れ替える完全ターンオーバーで臨んだ川崎は、リーグ戦王者・神戸を撃破してみせた。

 しかも右サイドバックながら、神戸戦でチーム最多の3本のシュートを放ったのが際だった。

 例えば開始11分。敵陣右サイドで1トップのバフェティンビ・ゴミスに縦パスをつけた際は、そのままペナルティーエリア内へ侵入。ゴミスからパスを受けた瀬古が放った低く、速いクロスに巧みに頭を合わせた際が、ボールをフワリと浮かせる軌道に変えて後方へ流し込んだ。

 先制点かと思われた絶妙のループシュートは、必死に体勢を立て直し、バックステップを踏んだ前川の懸命のセーブの前にCKへと変わった。先制点をあげた場面では瀬古が直接FKを蹴る直前に、それまでニアサイドにいた際がファーサイドへとポジションを変えている。

「たぶんリーグ戦とタイトルがかかった試合というのは雰囲気であるとか、僕たちがやるサッカーも変わってくると思うので一概にどうこうは言えないですけど、それでもこのメンバーで目指しているサッカーは間違っていないという証明になったので、チームとしてもいい自信になったと思う」

 万雷の拍手を浴びながら瀬川祐輔と交代した80分以降、ベンチで戦況を見守った際は幸先のいい白星を笑顔で振り返りながら、未知の相手が待つ今後の戦いを心待ちにするように言葉を紡いだ。

「昨年の王者だった神戸さんに対して、こういう結果を出せたことはよかったと思う。各チームの特色、というものがあるので、それはシーズンを通してどんどんアップデートしていきたい」

 川崎からはこのオフに登里亨平(現・セレッソ大阪)、山根視来(現・LAギャラクシー)と左右のサイドバックが相次いで移籍した。元日本代表の山根がレギュラーだった右は、本来は攻撃的MFの瀬川がACLの山東泰山戦で、そして神戸戦では新加入の際がそれぞれ先発している。

 瀬川は昨シーズンの終盤戦から、サイドバックとしての適正も見せていた。しかし、現時点でどちらが主軸を担うのか、といった点を際はおそらく気にしていない。オランダへ渡る前から貫いてきた、自分自身の成長を貪欲に求めていく姿が、川崎を右サイドから変えていく。

(取材・文:藤江直人)

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【了】

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