北海道の熊になってたまるか――。釜本氏との信頼と深い愛。クラマー氏が残した世界基準の育成術

2015年09月24日(Thu)10時39分配信

text by 藤江直人 photo Getty Images
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今も昔も変わらない基本の大切さ

 選手たちの自立を促す一方で、強化合宿では基本をひたすら繰り返すメニューを組んだ。

 たとえばヘディング。全体練習を終えて夕食を取ると、決まってディフェンダー陣と釜本が体育館に集められる。メニューはただひとつ。天井から吊るされ、勢いをつけて向かってくるボールに対して、順番にひたすらヘディングを繰り返していく。

 強烈なヘディングを見舞うには、ボールが最下点にきた瞬間に頭でヒットしなければならない。ちょっとでもタイミングがずれると、クラマーさんの怒声が館内に響き渡る。

「体を思い切り反り返らせて、胸を張って、あごを引いた体勢で前へ叩きつけろ」

 終わる気配のない状況に嫌気がさしたのか。最年少だった釜本に先輩選手があることを命じる。

「ボールを上へ弾き飛ばして、紐を天井に絡ませろ」

 練習を続行不可能にさせる作戦。しかし、クラマーさんは何事もなかったかのように、通訳を兼任していた岡野俊一郎コーチを天井によじ登らせ、紐をほどくように命じる。

 毎晩のように同じメニューを課されるなかで、釜本はヘディングを極める極意をつかんだという。

「体を反らせた状態をキープしながら空中でボールを待つには、腹筋だけではなくて背筋も徹底して鍛えないといけない。つまり、これをするためには、あれをする必要があることがやがてわかる。クラマーさんの練習には、そういうヒントが必ず隠されているんです」

 ペンデルボールと呼ばれるこの練習法はその後見られなくなったが、最近になってバイエルンが再び取り入れている。基本を徹底して繰り返すことの大切さは、昔もいまも変わらない。

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