北海道の熊になってたまるか――。釜本氏との信頼と深い愛。クラマー氏が残した世界基準の育成術

2015年09月24日(Thu)10時39分配信

text by 藤江直人 photo Getty Images
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信念を貫いたクラマー氏の90年の生涯

北海道の熊になってたまるか――。釜本氏との信頼と深い愛。クラマー氏が残した世界基準の育成術
指導者としてあるべき理想の姿を、信念を貫いた90年の生涯を通してクラマー氏【写真:Getty Images】

 2000mを超える高地で6試合を戦い抜いた影響もあって、チームはまさに精根尽き果てていた。ぐったりとした選手たちを前にして、クラマーさんは目を潤ませながらねぎらっている。

「君たちは歴史をつくった。日本が銅メダルを獲得すると誰が想像しただろうか。初めて会ったときに『大和魂とはどんなものなのか見せろ』と言ったが、確かに見せてもらった。最後の最後までみんなで力を合わせて戦いぬく『大和魂』を、今日の試合ではっきりと見せてもらった」

 ミュンヘン郊外にあるクラマーさんの自宅には、ちょっと古ぼけた一冊のサイン帳が大切に保管されていた。東京五輪後に椿山壮で催されたクラマーさんへの謝恩パーティーで、選手たちが各々の思いを綴って手渡したものだ。

そのなかに、黒いマジックで記されたこんな英文を見つけることができる。

 I don’t like to be Hokkaido bear K, Kamamoto

 北海道の熊になんかなってたまるか――。20歳だった釜本が記した不退転の決意は、日本が世界に誇れる偉大なストライカーへと成長させる礎になった。

「クラマーさんは『サッカーが上手くなるには3つのBが必要だ』とよく言っていた。ボールコントロール、ボディバランス、そしてブレイン。瞬時に体が反応するまで基本を反復することと、常に頭を使いながらプレーすることの大切さは、50年前も21世紀のいまも変わらないということなんです」

 選手たちの成長を心の底から願っているからこそ、どんなに厳しい言葉を浴びせ、どんなに激しい指導を繰り返しても、そこには揺るぎない信頼感と深い愛が生まれる。指導者としてあるべき理想の姿を、信念を貫いた90年の生涯を通してクラマーさんは後世に残してくれた。(文中一部敬称略)

【了】

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