北海道の熊になってたまるか――。釜本氏との信頼と深い愛。クラマー氏が残した世界基準の育成術

2015年09月24日(Thu)10時39分配信

text by 藤江直人 photo Getty Images
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厳しい言葉が飛ぶ練習と優しい素顔

 コーチ就任当初のクラマーさんは、ドイツ語しか話せなかった。しかし、日本人には英語のほうが通じるとわかると、翌年に来日したときには英語をほぼ完璧にマスターしていた。

 通訳についた岡野コーチは英語が堪能だったが、クラマーさんの意図をより明確に伝えるために、ドイツ語も習得して2年目に備えた。

 英語とドイツ語の両方で意思の疎通を図れた2人だったが、岡野さんは幾度となくクラマーさんの言葉を直訳することを避けている。あまりの罵詈雑言に、対象となった選手が耐えられないと判断したからだ。

 選手の自立性と奮起を促し、基本を徹底することの必要性を説くために、クラマーさんがあえて厳しい言葉を浴びせていたことは容易に察しがつく。

 一転して深夜になると音を立てずに選手たちの部屋を回り、毛布をはいで寝ている選手がいればそっとかけ直す。素顔のクラマーさんが優しい心のもち主だったことが、こんな姿からもひしひしと伝わってくる。

 メキシコ五輪の銅メダルをかけた地元メキシコとの3位決定戦にも、もちろんクラマーさんは応援に駆けつけた。舞台となったアステカ・スタジアムは10万人を超える大観衆で埋まり、メキシコの勝利を後押ししている。

 対する日本はわずか2日前に行われた準決勝で、最終的に金メダルを獲得するハンガリーに0対5で惨敗を喫していた。果たして、日本は気持ちを完全に切り替え、釜本の2ゴールで快勝した。

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