北海道の熊になってたまるか――。釜本氏との信頼と深い愛。クラマー氏が残した世界基準の育成術

2015年09月24日(Thu)10時39分配信

text by 藤江直人 photo Getty Images
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徹底した反復練習が産んだ「黄金のワンパターン」

 ベスト8に進出した東京五輪が全日程を終えた翌日。あいにくの雨のなか、代々木にあった選手村で時間をもてあましていた選手たちに向かって、クラマーさんはこんな檄を飛ばしている。

「これから練習するぞ」

 駒沢陸上競技場でボールを追わせた理由に、巧みに選手たちを奮い立たせたことで、クラマーさんが「言葉の魔術師」と呼ばれたゆえんが凝縮されている。

「試合終了の笛は、次の試合のキックオフの笛だ」

 東京五輪のベスト8をもって、日本サッカー協会とクラマーさんとの契約は終了した。それでも、愛する日本のために、1965年以降も年に一度は来日してはメキシコ五輪へ向けた指導を継続させた。

 そして、毎日のように居残り練習を命じられたのは釜本と杉山隆一。反復練習を徹底して繰り返させることで、メキシコ五輪において「黄金のワンパターン」を完成させることが狙いだった。

 全体練習を終えた直後とあって、当然ながら2人は疲れ果てている。

「何で決められないんだ!」

 釜本がゴールを外せば杉山が怒鳴る。ちょっとでも杉山のパスがずれれば、3歳年下の釜本も言い返す。
「杉山さんこそ、何をしているんですか!」

 罵り合うことも珍しくないなかで磨かれたホットラインの成熟度の高さは、メキシコ五輪で釜本が決めた7ゴールのうち4つを杉山がアシストした事実が証明している。

「杉山さんも僕も『また居残り練習か』とうんざりしたこともあったけど、最後は杉山さんがこういう体勢になったときはこのコースにパスが来ると、瞬時にわかるレベルになっていた。メキシコ五輪の相手は、日本よりはるかに強い国ばかり。必然的に何も言われなくても、みんなで守って、攻撃はカウンターから最後は『杉山と釜本に任せる』となる。それはクラマーさんが僕らにかけた暗示なんです」

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