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Jリーグ 1年前

町田ゼルビアは何が変わったのか? 前例のない改革の正体と日常に生まれた変化【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

コンセプトは選手へ浸透しているのか


【写真:Getty Images】



「北斗さんがすごくいいボールを上げてくれたので、僕は合わせるだけでした。自信とパワーを持って相手ゴール前へ飛び込んだ感じですけど、そこは自分の持ち味でもあるので。チームのファーストゴールは意識していなかったけど、勝利に繋がるゴールを取れたのは嬉しかったですね」

 試合は池田の先制ゴールをしっかりと守り、終盤の84分には翁長が直接フリーキックを叩き込んで2-0で快勝した。開幕戦からチャン・ミンギュとセンターバックコンビを形成。2試合連続の無失点で黒田監督が掲げる「勝つ、イコール、守れること」を実践している池田は言う。

「全員がハードワークを怠らず、組織がしっかりとしているから、それほど危ない場面は作られていない。ただ、誰かがさぼり出したらそこから崩れていくので、そこは全員が意識している。ミンギュはカバーリングもしてくれるし、前への強さもある。何でもできる選手なので安心して見ていられるというか、お互いに信頼し合いながら隣でプレーしているというのはありますね」

 高さと強さを前面に押し出した堅守から、セットプレーを確実に生かしてゴールを奪う。青森山田高時代をほうふつとさせる、現実的な戦い方で手にした初勝利を黒田監督はこう振り返った。

「イニシアチブを取るために、ゴール前を固めてカウンターやリスタートを狙ってくるチームもかなりある。そこでわれわれも優位性を生かしてリスタートから点を取れれば、精神的にもかなり試合を楽に進められる。今日は何としても先制点がほしかった場面で、下田北斗からすごくいいボールが入った。リスタートでも1点は1点ですし、完璧なゴールだったと思っています」

 さらに新加入ながら、すでに攻守両面において存在感を放っている池田には次のように言及した。言葉の端々からは、町田におけるチーム作りの根幹を成す考え方が伝わってくる。

「私自身もまだ高校サッカー選手権の方に注力していたので、新しい選手を獲るという部分ではそこまで介入していたわけではありません。ただ、青森山田じゃないですけど、球際で強さを発揮して、空中戦やリスタートにも強いセンターバックは、私がチームを作るにあたってどうしても欠かせませんでした。左利きでフィードもいい有能な存在として、信頼を置いて起用しています」

 リスタートで強さを発揮するためにも、精度の高いキッカーは欠かせない。青森山田で最後の仕事に臨んでいた黒田監督と、昨シーズン終了後に時間を見つけて連絡を取り合った原ダイレクターは、昨シーズンは大分トリニータでキャプテンを務めた下田の獲得にこう言及している。

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