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Jリーグ 1年前

町田ゼルビアは何が変わったのか? 前例のない改革の正体と日常に生まれた変化【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「サッカーの本質的な部分を大事にしている」



「近年のJ2リーグではセットプレーからの得点率がすごく高くなっている。その意味でリーグ屈指の精度と言っていい左足のキックを持つ、下田選手の獲得に至りました」

 J1で通算122試合に出場している31歳のボランチは、川崎フロンターレでリーグ優勝を2度経験した。勝者のメンタリティーを知る数少ない存在でもある下田はチームが始動した直後に、勝負強い指揮官というイメージを青森山田時代に確立させた黒田監督のチーム作りにこう言及していた。

「全体ミーティングでは、ストレートに『勝ちにこだわりたい』と言っていました。やりたいサッカーや戦術はいろいろとあるかもしれませんけど、それよりも戦う姿勢やチーム全体で一体感を持つところなど、サッカーの本質的な部分を大事にしていると思いました。僕たちもそこをさぼらないようにしながら、プロサッカー選手としてそれぞれが持っている特徴を出していきたい」

 黒田監督はまったく同じ11人を先発で送り出した一方で、仙台戦で[4-2-3-1]を、群馬戦では[4-4-2]を採用している。それでも、特に2列目の選手に求める仕事は変わらない。補強する選手をリストアップする作業でこんな要望も出していたと、原ダイレクターは振り返る。

「中盤の両サイドの選手に関しては、戦術的な交代を可能にしたいと。つまりインテンシティーの高いフレッシュな選手たちを、常にベンチに置いておきたいと」

 体力を消耗させた結果として、フル出場できなくてもいい。覚悟を決めたプレーのなかでアップダウンを泥臭く繰り返し、守備では球際の強さを、攻撃では前への推進力とゴールに絡むプレーを求める戦いからスター候補も生まれつつある。右サイドで異彩を放つ大卒ルーキーの平河悠だ。

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