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Jリーグ 1年前

町田ゼルビアは何が変わったのか? 前例のない改革の正体と日常に生まれた変化【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

生まれ変わりつつあるチームの雰囲気とは?



「エリキが真ん中にいれば、攻撃面で相手に脅威を与えられる。その上で守備もやってほしいところもあり、トレーニングでは上手くいっていたんですけど、実戦になるとなかなか継続してできない。群馬さんの最終ラインでボールを左右に振られ、エリキとデュークが左右にポジションを取ったときに、ボランチへ普通に通されてしまう場面がけっこうあった。プレスのスイッチがなかなか入らず、守勢に回ってしまう部分もあったので、荒木を代わりに入れてスイッチをもう一回入れ直しました」

 横浜F・マリノス時代に在籍1年半で21ゴールをあげ、2019シーズンのリーグ優勝に貢献した28歳のブラジル人アタッカーの“個の力”を前面に押し出す。オーストラリア代表としてカタールワールドカップでゴールを決めたデュークも然り。原ダイレクターはこう語る。

「デュークはすごく走れて、攻守の切り替えも速い。守備もできる点で黒田監督が求める選手でしたが、とにかく交渉が難航しました。J1だけでなく、中東のクラブも加わっていたので」

 前線では個の力に委ねるものの、チームとしての守備を最優先させる黒田監督の方針が、原ダイレクターの言葉からも伝わってくる。エリキも「フル出場したいし、ゴールも決めたい気持ちもあるけど、何よりも重要なのはチームの勝利なので」と自らを納得させるように言葉を紡いだ。

 青森山田時代の代名詞だったロングスローも、プロの舞台で実績を持つ翁長に役割を託した。もっともロングスローの回数そのものは仙台戦の3度から、群馬戦ではチャンスがあったにも関わらず1度に減った。ロングスローに関して、黒田監督は仙台戦後にこう言及していた。

「ゴールがほしいときには武器のひとつとして活用していく。ただ、プロの選手は身長も高いし、なかなか上手くいかない。投げるポイントも含めて、もう少し工夫をする必要がありますね」

 ロングスローはそもそもボールの威力に欠ける。弾き返された末にカウンターを食らうリスクを考えた末に、群馬戦では自重した部分もあったのだろう。同じポジションの翁長が投じるロングスローに「僕は無理。肩が外れます」と苦笑した太田は、生まれ変わりつつある町田をこう語る。

「常日頃から失点しないようにみんなが体を張って、練習の段階から実戦と同じようなテンションでプレーしている。僕もいままでいろいろな監督のもとでプレーしてきましたけど、練習からピリピリした雰囲気を作ってくれる監督はなかなかいない。マンネリというか、どうしても温くなってしまうケースが多かったんですけど、だからといって試合でだけやればいいものでもないので」

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