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Jリーグ 2か月前

一瞬の以心伝心。1人少ない横浜F・マリノスはなぜ勝てたのか?山根陸の脳裏にあった狙い「さらに役割は鮮明」【ACLコラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

エースが称賛する山根陸の働き



「あの場面でも陸はものすごく冷静で、僕の動き出しをしっかり見ながら最高のパスを出してくれた。陸の質の高さはわかっていたので、いい動き出しからフリーになれば、必ずいいボールが来ると信じていた」

 セカンドレグの決着をつけたエースの一撃が、ACLにおけるマリノスのクラブ記録を更新するベスト4進出を手繰り寄せた。もっとも、殊勲の山根は恐縮した表情を浮かべていた。自身が声をからせた場面で、11歳も年齢が離れた宮市を「リョウ!」と呼んでいたとメディアから知らされたからだ。

「観客が多かったし、歓声などで聞こえていなかったと思っていたので、それはよかったという感じですけど、呼び捨てにしていましたか……存在を伝えるというか、黙ってプレーするよりはいいかな、と」

 敵地・済南で6日に行われたファーストレグを、マリノスが2-1で制して迎えたセカンドレグ。FWヤン・マテウスが負傷退場し、宮市と交代した43分からピッチ上に暗雲が垂れ込み始めた。

 直後の44分にイエローカードをもらった左サイドバックの永戸勝也が、後半開始早々の47分に2度目の警告を受けて退場してしまう。しかし、マリノスのハリー・キューウェル監督はすぐには動かなかった。宮市を一時的に左サイドバックに配置しながら、数的不利を補う選手配置に考えを巡らせた。

 セオリーではシステムを[4-1-2-3]から[4-4-1]に変えて守備を重視し、スコアレスドローでもよしとする布陣となる。しかし、現役時代はオーストラリア代表の攻撃陣を「魔法使い」という異名とともにけん引した指揮官は、前線にロペスと宮市を残す[4-3-2]を選択した。

 永戸の退場から6分後の53分に、インサイドハーフの植中朝日に代えてDF渡邊泰基を、FWエウベルに代えて山根を投入。渡邊が左サイドバックに入り、山根は左の渡辺皓太、中央の喜田拓也とともに右で3ボランチを組んだ。キャプテンの喜田の言葉を聞けば、キューウェル監督の狙いがわかる。

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