なぜFC町田ゼルビアのロングボールは通用しなかったのか?
「一番感じたのは、僕らのボランチやセンターバックからロングボールを入れる際に早めにラインダウンして、弾く準備をされるとともに僕たちの背後のスペースを消されていた点。セカンドボールを拾わないと攻撃は始まらない。それを回収され続けたのは、僕たちの出足の方が遅かったからだと思っている」
敵地で普段着のサッカーを貫き、スキッベ監督のもとで積み重ねてきたチーム戦術と個々の力をそれぞれ120%出し切った広島。対照的に町田は初めて対峙した骨のある相手である広島に対して、フォーメーションを含めて奇をてらいすぎ、結果として多くの時間帯で前節までの“らしさ”を失っていた。
もっとも、試合は80分以降で違った様相を呈している。後半途中から[4-4-2]にスイッチしていた町田が、藤尾に代えて186cm84kgのオーストラリア代表FWミッチェル・デュークを投入。オ・セフンとのツインタワーをターゲットに、ロングボールを放り込んで圧倒する戦法に変えてきたからだ。
67分まで0だった町田の十八番のロングスローは、最終的には6本を数えた。82分に右サイドからDF鈴木準弥が投じた4本目を大橋が頭でクリアを試みるも、自軍のゴールに吸い込まれてしまった。
町田のロングスローに対して、鹿島アントラーズや鳥栖はスローワーの至近距離に長身選手を立たせて、コースを遮る対策を講じてきた。しかし、広島はここでも普段着で臨んでいる。
「ちょっとオウンゴールになってしまいましたけど、基本的に町田さんはロングスローがこぼれた後のセカンドボールを拾ってからの2次攻撃によるゴールが多い。なので、そこ(至近距離)でウチの選手を1枚使うよりは、中でセカンドを拾える枚数を増やそう、というのがチームの考え方でした」
試合の大部分をベンチで見届けた荒木が“無手勝流”の町田対策を明かせば、満田は町田が実施的なパワープレーを仕掛けてきた時間帯の戦い方を反省点としてあげ、次節以降の課題として掲げた。