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世界のトップに立つために――。ザックジャパンの軌跡。激動の4年間に込められた、選手・監督・協会、それぞれの信念

text by 藤江直人 photo by Getty Images

岡崎慎司、ナンバーワンストライカーへの野望

 心技体が最も充実する28歳で迎える、4年後のブラジル大会へ。熱い思いをシンクロさせながら、長友は心の中で懺悔を繰り返していたことになる。大会直前で不慣れなワントップを託されながら2ゴール1アシストをマークし、パラグアイ戦でも懸命に戦い抜いた本田に本当の意味で続こうと決意を新たにした。

 パラグアイ戦後に抱いた長友の思いは、アルベルト・ザッケローニ体制へ移行した新生日本代表において、時間の経過とともに暗黙の合言葉となっていく。

「だからこそ、4年後のブラジル大会ではトップを目指す。強い信念を持つ。そのために、日々100%、やれることをやると心に決めたんです」

 長友に続いて本田の背中を追うと心に決めたのは、FW岡崎慎司だった。大会直前で当時の岡田武史監督からワントップ失格の烙印を押され、サブへの降格を味わわされた。

 全4試合に途中出場し、デンマーク代表とのグループリーグ第3戦の後半43分には、勝負を決めるゴールも決めた。しかし、憧れてきたヒノキ舞台でのゴールを、岡崎は本田に譲ってもらったものと位置づけている。左サイドでボールをキープする本田にマークが集中し、右側をフォローした岡崎はほぼノーマークの状態で、本田からのパスを押し込めばよかったからだ。

 南アフリカ大会に臨んだ自分自身を、岡崎は冷静に分析していた。

「先発で出られるのは個の力で何とかできる選手。僕にはそうした能力がない。これからいい選手がどんどん出てくるし、このままでは次のW杯に出られる保証もない。その中で自分も世界を見据えてやらなきゃいけない。無謀に聞こえるかもしれないけど、自分には世界ナンバーワンのストライカーになるという野望がある」

 174cmと上背はない。50m走のタイムも、一度も7秒を切ったことがない。滝川二高からプロ入りを希望した際には当時の黒田和生監督に「無茶だ」と反対され、実際に加入したエスパルスでは8人いたFWで8番目の評価を下された。長谷川健太監督(現ガンバ大阪監督)からサイドバック転向を勧められたこともある。

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