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世界のトップに立つために――。ザックジャパンの軌跡。激動の4年間に込められた、選手・監督・協会、それぞれの信念

text by 藤江直人 photo by Getty Images

日本代表は日の丸を背負うトップランナー

 本田とともに車の両輪を成してきた長友は、冒頭で記した、封印を解いた理由をこう説明している。

「ずっと危機感を抱いてきたんですけど、W杯が近づくにつれてどんどん増してきた。このままじゃ後悔する。一日一日を大事していかないと。僕たちは勝つためにブラジルへ行くのであって、お祭りで行くわけじゃない。そのための準備を、W杯が終わった時にすべてやり切ったと思いたいので」

 2大会ぶり4度目のアジア王者獲得も、本田をけがで欠いたアジア3次予選で喫した2つの黒星も、満員の埼玉スタジアムを狂喜乱舞させたブラジル切符獲得も――。すべてが通過点であり、コンフェデレーションズカップで喫した屈辱の3連敗も、オランダ代表と引き分け、ベルギー代表には逆転で勝利した昨年11月のヨーロッパ遠征を含めて、共有してきたすべての時間を成長への糧としてきた。

 一方で、昨年末からは実務方のトップである専務理事を兼任している原技術委員長は、リオデジャネイロ五輪出場を目指すU‐21日本代表、その下のカテゴリーのU‐19日本代表にも現在のA代表と同じコンセプトで戦うことを求めている。

 ブラジル大会以降のA代表も然り。まだアマチュアだった日本代表が初めてW杯予選に挑んだ、1954年のスイス大会からちょうど60年。日本サッカー界にようやく産声をあげようとしているグランドデザインが、初めて試される舞台がブラジルとなる。原委員長はこうも語っている。

「各年代を含めた日本代表のこの4年間の流れだけは、後戻りすることなく継続していきたい。そういうサッカーでなければ世界のトップ10には近づけないと、選手たちも思っているはずなので。そのためには、ブラジルで日本のよさを前面に押し出しながら戦い、結果を出したほうがやりやすい、というのはありますね」

 日の丸を背負うトップランナーとして、攻撃的なサッカーを追及してきた4年間の波乱万丈に富んだザックジャパンのチャレンジに対する答えは、ブラジルの地で真っ向勝負を挑んだ先に待っている。

【了】

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