「炎上隊長」がピッチで示すべき矜持
思い起こすこと8年前。2010年の南アフリカワールドカップ直前にも、長友はイングランド戦でセオ・ウォルコットを完封。代表落選に追い込み、一気に勢いに乗った。そして本大会では、カメルーンのサミュエル・エトオ、オランダのエルイェロ・エリアら相手キーマンを次々と完封。日本のベスト16進出の立役者の1人となり、その後の華々しいキャリアにつなげている。
そういう意味でも、今回は原点に返って相手を徹底的に完封するところから始めるべき。その重要性を本人もよく分かっている。
「理想ばかりでは勝てないので、とにかく自分たちが下手だということ、強くないことをまずはしっかりと認めて、そのうえで自分たちにできるサッカーを1人ひとりが100%を出し切ること。それだけかなと思います」と彼は語気を強めていた。
西野体制発足後の日本代表は、パス交換や攻撃の組み立てなどボール支配を前提としたトレーニングが目に見えて多くなっている。だが、長友の言うように強豪相手のゲームではそう簡単にはボールを持たせてはもらえない。
スイス戦というワールドカップ前哨戦で指揮官もチームも厳しい事実を改めて再認識させられるだろう。そこで焦ったり動揺したりしていては何も始まらない。ガーナ戦のように守備陣のミスからあっさりと失点を繰り返す形などは論外だ。とにかく粘り強くスイスの攻めを封じること。長友にはそのけん引役として確固たる存在感を示してほしい。
「年齢で物事判断する人はサッカー知らない人」とツイートして炎上したことを笑い飛ばし、自らを「炎上隊長」と称してメディアを笑わせた強靭なメンタリティは非常に頼もしい。今こそそれを前面に押し出し、タフに戦うことが肝要だ。
(取材・文:元川悦子【ゼーフェルト】)
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